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September 21, 2004

消え行く場所-昭和28年の都営住宅

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僕の生まれた都営住宅は昭和28年に建てられた。
これも実は、ついこの間、移転のための説明会で初めて知った。

来年中には取り壊しが決まっている。後には5階建と7階建の高層棟が建てられる。

ここは、ぼくにとっては懐かしく、そして恐ろしい場所である。
それはここで過ごした時間がそのまま、そうだったからだ。

生母と離婚した父は再婚し、僕の祖父母と親権を争い、この住宅に住む祖父母は
とうとう僕を手放さなかった。
新しい母は、僕を連れにやってくる恐ろしい悪魔でしかなかった。
幼稚園も小学校も、直前までどこに通うかはっきりしなかった。
そして大人たちの争う声。それはここでなされた。

この場所に来るとその頃の不安な日々が、懐かしさと恐ろしさの入り混じった感覚でよみがえる。
何十年も前のことなのに。

祖父母はいてくれたが、僕はこの場所で、ひとりだった。心象の意味において。

元来、納得がいかないのだろう。自分の誕生にも、去った母にも。
まだ思い出していないことがある。きっと何か忘れていることがある。
それはもっと恐ろしい何かの記憶かもしれないし、意味のないことかも
しれない。

ここに来るたびにそれを心の中で反芻している。
そうした自分が自分でわからない。何のために?

そうした場所が来年消える。

自分の心のバランスにそれがどう作用するのかわからない。
何も起きないのかもしれないし、何か起きるのかもしれない。

何一つわからないままに、僕はその時間を閉じ込めようと、アルバムに記録をした。
それ以外に今できることが思いつかないからだ。

いつも子供の声でにぎわっていた児童公園もこの場所の住民の老齢化により
今はもう遊ぶ子供の姿はない。
樹木も工事で全て切り倒されるそうだ。

現実が消える中、
デジタルに封じた時間と空間の中で、何かが見つかることはこの先あるのだろうか。

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