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March 12, 2005

東京の地下と父のことを考えた---「地下鉄(メトロ)に乗って」

metro

浅田次郎はあまり読まない作家なのだけれど、ネットである方が紹介しておられたので興味を持ち、前から気にしていたのだ。それで図書館で借りて読んでみた。

事業に大成功し大富豪となって君臨しているが、人間として尊敬できない自分の父に反発する主人公が、東京の地下鉄空間の中で時空の狭間に落ち、時間をさかのぼって戦中~戦後をエネルギッシュに生きる若き日の父の姿に向かい合うという物語である。

SFの構成としては、稚拙な感じなのだけれど、「今は許せない」父の生きてきた軌跡に向かい合う主人公には自分を重ねて思うものがあった。

一方で小説中の「父」は、空襲警報のさ中でも電話をはなさず、修羅のごとく土地を買いまくっていたという、あの西武の創始者堤康次郎にも、時節柄重なってしまうのだ。
浅田次郎がこれを書いたのは1997年ということだけれど、どうだろう。あるいはそのイメージを持っていたかどうか。

そう言えば僕は「今生で」父とわかりあうことがついにできなかったので、父の葬儀の挨拶では、「後20年くらい時間が欲しかった」と参列者に挨拶したのだった。20年という時間に大して根拠はなかったのだけれど、あと20年くらい時間があれば、もう少しいろんな話をお互いに平静にして、もう少しわかり合えたように、あの時は思った。自分ももう少し年を重ねることが必要だったのだ。いろんなことを考えるためにね。
この小説のように、時間を遡ることはもちろん現実にはできないことだったのだが。時間は確かに欲しかったなあ。

ところで銀座線が、こんな昔から東京を走っていたということにも、あらためて驚いた。
調べてみたら

(銀座線は)浅草~上野2.2kmは、1927年12月30日に開業した日本初(世界では14番目)の地下鉄である。浅草~新橋は東京地下鉄道により、渋谷~新橋は東横電鉄(現在の東急電鉄)傘下の東京高速鉄道の手により開業した。(Wikipedea 銀座線より)

とある。小説にも出てくるが、そういえば昔の地下鉄は耳をつんざくような金属音がいつもしていて、時折不快さに耳をふさいで乗っていたこと、そして何だか独特の匂いがあったことも、おぼろげながら思い出す。

あのころの地下鉄は、小説にあるように、照明も暗く、絶えず点滅を繰り返し、闇と光が交錯していた。子供の頃は何だかちょっとおっかなびっくり乗っていたのだ。
何十年も後になり、その地下鉄でオウムがサリンを撒くことになったことがどうしても頭を離れないけれど、この小説に出てくる地下鉄はあくまでも、「こちら側」と「むこう側」とを繋ぐ不可思議な乗り物なのである。

ちょうど、いかがわしく、それでいて魅力的な、移動遊園地のメリーゴーランドのようなね。そんな感じ。

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Comments

読んでないので、地下鉄に反応します。
地下鉄といえば上野~浅草、そして早川徳次(シャープの創業者と同姓同名ですが、別人のようです)。いかに浅草や上野がにぎわってたか、ってことですよね。
「今日は帝劇、明日は三越」(日本橋駅に地下鉄が通ったときのキャッチコピー)の前ですものね。

昔実家に帰るのに上野を使っていたとき、銀座線に乗ると、地下鉄の上野駅はたしか白い小さいタイル張りで、「当時のかな?」なんておもいながら歩いたことを思い出します。浅草はたしか天井が低かった覚えが(あまり何度も行ってないのでうろ覚え)。

地下鉄開通の話は荒俣宏「帝都物語」に出てきます。
妖怪が嫌いでなければ(^_^;)あの作品は荒俣宏の知がすべて入っている力作(実在人物多数出演で、あそこから私はどれだけわき道にそれるスタート地点を受け取ったことか!)なので、お薦めです。

トラバありがとうございます。
お忙しいのでしょうに、読んでくださったのですね。その辺がBigBanさんの律儀なお人柄でしょうか。
東京に暮らす方には、地下鉄の話など私のような田舎者よりずっと身近に実感を持って読まれたでしょうね。ちょっと羨ましいような。
ぶんだばさんが書かれている「帝都物語」私も昔、夢中になって読みました。映画は見ていませんが。創作小説の中で実在の人物が生き生きと動き、語る、それがとても新鮮に感じたのを覚えています。実は私も「地下鉄に乗って」を読みながら、ふと「帝都物語」を思い出したものですから反応してしまいました。


>ぶんだばさん、
>なおこさん

コメントありがとうございます。
「帝都物語」は、映画版の嶋田久作の怪人ぶりが記憶にありますが、映画も見ていないし、小説も読んでいません。
お二人のコメントを見ていたら、読んでみたくなりました。

東京の地下には、地下鉄以外にもいろんなものが埋まっていて、「東京の地下」というようなタイトルの本もあったと思います。

>なおこさん

この本教えてくださってありがとうございました。
メッセージ「誤受信」ではなかったようですね。(笑)

ではでは。

嶋田久作はあれがデビューじゃなければ普通のおじさんなのに…どうしても、今見ても「カトー」と思ってしまうので、いけないですね。
という話はともかく、「帝都物語」は明治から近未来までのお話(近未来はもう現時点では過去)ですが、実在の人物が(架空の人物との対決以外は)歴史と同じように動いていること、都市建設の様子などが詳しく簡単にわかるなどで、今読んでも面白いです。
映画はテレビで見ましたが、主人公(って言っていいのか?)が石田純一で、その友人のすごくいい人が佐野史郎な時点で間違ってます(^_^;)

東京の建築計画、というような本も文庫ででていたような気がします。今のごたごたした町並みをみていると、都市としてえいやっと計画した明治の人々は偉大だったと思います。

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