SNS

My Photo

BooksBooks

無料ブログはココログ

« あれから10年----ソフトバンクも成熟したとつくづく思う。-2 | Main | なぜ君が代を歌わないと処罰されるのか(1)----東京都教育委員会の違憲行動 »

April 02, 2005

空気の乱れ----北朝鮮への人間的希望

pyon

事は、サッカーの判定を巡ってのトラブルである。北朝鮮--イラン戦。自国に不利な判定をされたと観客がサッカースタジアムを憤って取り囲み、相手国の選手にプレッシャーをかける。
よくあることといえばよくあることなのだが、これが北朝鮮での出来事だから、驚いた。暗闇に険しい目つきでスタジアムを取り囲む灰色の群衆を見たとき、なにか胸の奥がざわめくものを感じた。

間もなくアウェイでの北朝鮮との対戦を控える日本にとって、不安を感じたのも事実。だがなんだろう。この心のざわめきは。

何もかもがうそ臭い劇場国家、北朝鮮。その中でも人工都市をさらに虚構で塗り固めたような平壌市民のうそ臭さといったら、際立つものがあった。選ばれて平壌に住むことを許された人々は、国家行事のたびに明らかに強制動員され、均一で不気味なロボットのような目をして、一糸乱れず、国に期待された役割を演じて見せる。「洗脳」と呼んでしまえば簡単だが、その深い昏睡状態にあるような国民の存在は、人類が生んだ中でももっとも劣悪な体制の悲惨を、幾度も幾度も私達に思わせてきた。

それがこの騒ぎの中、スタジアムに集まった観客達は、私達の知っているロボットのような平壌市民ではなかった。今まで虚構で武装された体制に開いた、「穴」のような闇の奥から、この国に住む、生きた人間の怒りや息遣いが感じられたような気がして異様な興奮を覚えたのだ。

かつての東の体制の崩壊を思い起こす。1989年、ハンガリー政府はオーストリア国境との高圧鉄条網の一部を撤去。NHKの放映で有名になった「ヨーロッパ・ピクニック計画」の名の下に多くの東独市民をハンガリー経由で西側に脱出させ、それをきっかけについに"ベルリンの壁"の崩壊に発展した。東ドイツ国民は雪崩のようにハンガリーへと向かい、オーストリア経由で西ドイツへと逃げ出したのである。計算されなかったドラマは民衆の一見無秩序とも思える行動から、突然動いた。

人が人として生きる、生命力や未来への希望を封殺されていることが、北朝鮮の大きな邪悪とされているが、特権的立場を与えられている平壌の知識層は、この国の他の地域に住む人々に比べて圧倒的に情報を持っている。制限付ではあるが、インターネットもアクセスしているという。こうした都市の知的階層のマグマは、この漆黒の夜の国家の地下にも、密かに脈打っているのではないか。

夢想する。いつか、こうした政治や体制とは無関係に見えるような、「大気の乱れ」「風の乱れ」のようなものから、いつも歴史は動いたのだから。計算を超えて。
かつて北朝鮮を、日本の背負ったカルマでもあるとこのサイトでは書いた。そのカルマの払拭は今世紀の日本にとって無関係の「夢想」であってはならないと思う。

おおよそ、人が人を弾圧する。その極めて不自然で不徳な時間が、長期にわたって続いた試しは無いのだから。

信じる。あの暴動寸前の緊張状態は当局によって作られたものではなかったことを。
人の血や、命、荒々しい呼吸をこの国の人たちに感じたのは少なくとも私達には、初めてだったはずである。暗く暴力的な人々の視線の先に、例えて言うなら未来の兆しを見たように思った。それは絶望ではなく希望であるはずだ。いや、希望に変えていかなければならない。

« あれから10年----ソフトバンクも成熟したとつくづく思う。-2 | Main | なぜ君が代を歌わないと処罰されるのか(1)----東京都教育委員会の違憲行動 »

Comments

BigBanさま、こちらからもトラックバックさせていただきました。 おそらく、私がぼんやりと感じたものを、BigBanさんは一層明確に感じ取ったのだと思います。北朝鮮の人々が軍人や警官の制止を無視する形で騒ぐ・・・そんなこと有り得ないと思う気持ちと、そうやって騒ぎ続けて、ふつうの人間であることをもっと知らしめてほしいという気持ちと。その二つがないまぜになって、期待ともつかぬ、恐れともつかぬ、何とも形容しがたいものを感じています。

高田さん、いつもありがとうございます。
通常なら、日本代表の北朝鮮でのアウェイの試合を案じて然るべきなのに、こうした感覚はどうなんだろうと、あちこち見ていたら、高田さんの記事に私と同じような感覚がこめられていたので、そうなのかと、より意を強くしました。
ただ、この「感覚」は未だなんとも言えない茫漠としたもので、どちらに流れるとも言えない、危ういものですね。全くの勘違いかもしれない。問題の真髄をついているかもしれない。
それこそ後になってみないとわかりません。

そちらのサイトでの北朝鮮での経験談も興味深く拝見させていただきました。

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/28156/3528268

Listed below are links to weblogs that reference 空気の乱れ----北朝鮮への人間的希望:

» サッカーW杯、ピョンヤンで観客騒ぐ [札幌から  ニュースの現場で考えること]
先日のサッカーW杯最終予選・北朝鮮-イラン戦の試合中、および試合後、ピョンヤンのスタジアムで、観客による騒ぎがあったと報道されています。観客の騒ぎ方が、サッカー... [Read More]

» 北朝鮮vsイラン戦を見て物申す。 [どこか遠くでフッチボル]
仕事中だったけど、北朝鮮vsイランをテレビ観戦していた。 日本有利になるよう北朝鮮を応援していたんだけれど、結果はイランの圧勝。 また、この試合は北朝鮮の国際地... [Read More]

« あれから10年----ソフトバンクも成熟したとつくづく思う。-2 | Main | なぜ君が代を歌わないと処罰されるのか(1)----東京都教育委員会の違憲行動 »

-