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May 10, 2005

JR西日本の会見報道に思うこと----世界は過ちと無謬の2色ではない。

あらゆる意味で過ちのない人間はいないし、その人間が作ったことを考えれば、過ちのない国も組織もない。全てのシステムは、人がその原初に関与したという意味で、あらかじめ過ちを内在している。

そうであるなら、私達は自分の過ちと、そして他者が犯す過ちの両方を、
あらかじめ織り込んで生きていくべきだろう。

もしもこの世が戦いに満ちているとしても、全ての間違いを認めずに、つまり「前線」を一歩も後退させずに生きていくことは厳しいし、そしてまた硬直や不合理の極みでもある。どうしたら自分のあやまちを認めずにできるかとごまかしたり、あるいは逆に開き直ったり凄んだりすることに時間を費やすくらいであれば、全面的にではなくても、局地的にはさっさと謝ったほうが遥かに楽であるし、譲れないところでの、次の反撃のチャンスも伺える。

そもそも世界は完全な過ちと、完全な無謬との2色に染め分けられて構成されているわけではない。当たり前のことだ。
欧米では、過ちを認めてしまったら、それで負けだとされるので、絶対に詫びないなどという言説が多いが、仮に百歩譲ってそうであったとしても、我らの世界が彼らの価値観につきあわなければならない理由もない。

認めるべきは認め、認められない部分は認められないとして、個々に細かく対応していくタフな外交術はあってしかるべきだし、そうした人間関係の対処方法は、色濃くこの国のユニークな伝統かもしれないが、こうした手法をそう蔑んでばかりいる必要はない。
譲るべきところを譲りながらこちらの言い分を通す機を伺っていくことは、重要な交渉術の一つである。これは最近の中韓への対応においても感じるところ。

そして、これも重要なことだと思うのだが、相手がいったん過ちを認め、それを謝った以上は、永遠に罵倒され続けなければならない理由もまた、ないはずだ。攻守は一瞬にして入れ替わりうるのであり、だからこそ攻めている側もそれを深く自覚すべきなのではないか。

これを実感する出来事は、しばしばあなたや私達の日常にも起こるが、最近ではJR西日本の脱線事故である。会見に際して、社長を始めとする経営陣に罵倒の言葉を浴びせかける報道の姿勢が批判されている。

「遺族の前で泣いたようなふりをして、心の中でべろ出しとるんやろ」
「あんたらみんなクビや」
四日深夜、ボウリング大会が発覚した後のJR西日本幹部の会見。激しい言葉を次々と投げかけられ、この幹部はぐっと唇をかみ締め、目を伏せたまま微動だにしない状態が続いた。
発言したのは、犠牲者の遺族ら事故に巻き込まれた関係者ではない。会見に出席した一部の記者がぶつけたものだ。
こうした荒れた会見の様子をニュースやワイドショーで放送したテレビ局には、視聴者から「遺族の代表にでもなったつもりなのか」などとマスコミ批判も寄せられた。

(中略)

・・・会見の場で質問する記者の多くは社名を名乗ることもなく、時に怒声をあげてJR西側の回答をさえぎることも。このため、マスコミ側に寄せられた苦情には「罵倒(ばとう)だけの会見は恥ずかしい限り」「記者の会社名と名前を出すべきだ」といった意見も多かった。
 ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは「感情的な言葉はあまりに聞き苦しい。自分もミスを犯すかもしれないということを忘れ、恫喝(どうかつ)的な姿勢になっている」。

 音好宏・上智大助教授(メディア論)も、説明責任を果たしていないJR西日本が社会的非難を受けるのは当然としたうえで、「歴史的事件の最前線にいる記者がつい冷静さを失うのは分かるが、記者の感情の高ぶりに任せた質問が逆に視聴者に違和感を覚えさせたのでは」と、記者側に自制を求める。

 放送批評懇談会の志賀信夫理事長は「一番大切なのはなぜ事故が起きたのかという点だが、現状ではJR西日本のダメぶりをボウリング大会などの不祥事から誇張して騒ぎ立てている印象だ。事故原因や、職員と車掌は何をすべきだったのかなど、事の本質を客観的に報じることが求められている」と話す。

 遺族や被害者の立場に立った報道は重要だ。しかし、客観性や冷静さを欠いた報道は、今回の事故の本質を見失わせる。そのことを肝に銘じながら、真実を追いかけていきたい。(5月7日産経新聞朝刊:JR脱線事故取材班)

本質的な事故原因の究明は途上だけれど、R西日本側が、最初から細かなミスを認めず、事実を隠すととられても仕方が無いような発言や工作があったことも事実である。しかし、
「遺族の前で泣いたようなふりをして、心の中でべろ出しとるんやろ」
などという暴言を吐かれたJR西日本幹部は、頭を下げた後ですかさず、「あなたの社名を聞かせてください」という反撃に出ても良かった。暴言を吐いた記者はどのように対応しただろうか、あるいはこうした行動をとったとすれば、JR西日本側は視聴者からどのように受け止められただろうか。

いつ自分がその立場に立たないとも限らないという痛みを欠如したところで、傲慢の上にも傲慢を重ねる人物というのは、報道に限らずどこの世界にもいる。問題は、こうした人物の行動もまた現代においてはウォッチされているということであり、必ず批判に晒されるということだ。

我々もそう馬鹿ではない。

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Comments

TBありがとうございます。
今回だけではなく マスコミの思いあがった態度は許せない物ががあります。
情報をきちんと客観的に伝えるべき役目はどこへやら。
読んでいて見ていて、見苦しさを感じることが多いです。

TBありがとうございました。識者の方々にも同様に感じている人がおられるんですね。読みごたえのある記事をお知らせ頂きありがとうございます。

初めまして。
今回の分、TBさせていただきました。
それと、いつも楽しみに読ませていただいてます。

JRの件は、物事を判断する大切さという部分で、
僕ら傍観者にも要求されている事が多いと感じてます。
単純に悲しんじゃいけないし、単純に怒ってもいけないし、
そのバランスの取り方は難しい…神経質にならなきゃいけない事柄だと。
ましてや報道する立場の人間がこのような気構えを持つ事、
それはある意味で責務だと思っています。
Bigbanさんのご意見、ごもっともです。

Bigbanさん、こんにちは∈^0^∋
TBありがとうございました。
また、遊びに来ますね。
くまさんでした。ではでは(^.^)/~~~

初めまして&TB Thanksです。
自分もいつそんな状態に置かれるかもしれない。と考えると自戒をせずにはいられません。

TBありがとうございます。
特にテレビの報道は目にあまりますね。まぁカメラマンは会見の模様を収録するだけなんでマスコミの一角に入れられて気の毒にと思います。しかしその映像を編集した段階でちょっと「悪意」があったんじゃないかと感じたりもするし、何よりもそれを責任者(ディレクター)が放送の許可を出したことにも同じように感じていました。ともかく雪印事件の辺りから、マスコミの企業バッシングする時に姿勢は異常を感じていたのですが、今回は極めつけという感じでした。子供には「ああいう風に人を責めるのはアホのすること」といいながら、そうしか言ってやれないという己の力量の少なさも反省してました。それじゃまた何かご縁がありましたらよろしくどうぞ。

まとめてのご挨拶で失礼。
書き込みありがとうございます。

今回特に問題とされている人物はおそらく1-2人なのではないかと推測します。(自信ないが)そのために、多くの記者がいっしょくたにされてしまっていることは、JR西日本と共通の状況がすでに生じているかもしれない。

もちろん、報道全体の姿勢(ボーリング大会関連からの一連)には問題が多いことも事実ですが、こうしてインターネットでチェックしあい、互いに見解を確認し会えるようになったということだけでも、既存のメディアに対して対抗できる大いなる基盤ができつつありますね。

以前であれば、おかしいと思ってもばらばらに孤立しがちだった意見を、こうして確認しあい、まとめることができるのですから。


こんにちは。

管理人さんのご意見に深く同意いたします。
ちょっとマスコミ報道におかしな面が多いですよね。

ただ、管理人さんのこのブログとは少し外れるのですが、
最近のネットでのマスコミ批判の中には、
あまりに反マスコミに熱中し過ぎるあまり、
自分の立ち位置を見失ったようなものも見られます。

完全にJR擁護になってしまっているようなものとか。

例えば、完全な匿名空間では、
「ボーリングして何が悪い」
という発言をよく目にするんですよ。

いくら何でもそれはどうかと思うんですね。
非難の仕方が常軌を逸しているとするのは賛成ですが、
「不謹慎」であることは間違いないと思うんです。

管理人さんの言葉をお借りすれば、
逆の意味で、「過ちと無謬の2色」だけで
モノを言っているということなのかもしれません。

こんばんは。

>最近のネットでのマスコミ批判の中には、
あまりに反マスコミに熱中し過ぎるあまり、
自分の立ち位置を見失ったようなものも見られます。

何か事件がおきるたびに、マスコミへの批判が最近きついですね。まあ、今回は言われてもしょうがないような一部の発言とか態度とかあったわけですが、一つの事件を発信源として、様々な論が巻き起こるのはしかたがないとは思いますが、JRを批判するのも、マスコミを批判するのも、根は同じ危険性を持っていると思うのです。

これは、前に中国のことで記事にしましたけれど、ちょっと立場が違ってしまえば、マスコミ批判側になったり、JR批判側になったりする。もちろん自分もその例外ではないのだけれど、「どちら側につく」ということではない、「客観的批判」とでも言うべき論の方向に、やはり自分としては持っていきたい。

ただ、これにももちろん危険はあって、優柔不断だったり、論が曖昧になったり、是々非々で対応しようとするあまり、難しい局面になったりします。

知り合いの新聞記者の言だと「記者の先生はおまわりさん。新人の時に警察担当の記者クラブに配属され、年配の副署長さんに、人権とかプライバシーなどについても教わる」とのこと。いわゆるサツ回りが悪いことばかりではないでしょうが、先生の悪い体質が伝染することはないのかな。
 居丈高な記者会見は、刑事部屋で机をドンと叩いて、「こら、いい加減に言え!!」と怒鳴るようなもの(もっとも刑事ドラマの世界なので実際かどうか知らないけど)。
 最初、駐車場にとめてあった自動車がぺしゃんこだったら「踏切事故」という情報が流れたりして振り回されたことも、記者たちのJR西日本不信をつのらせたのではとも思います。
 


 以下のブログに、三戸祐子さんの『定刻発車』(新潮文庫)、富井規雄『列車ダイヤのひみつ 定時運行しくみ』(成山堂)という本が紹介されています。後者はダイヤ編成者の書いた本のようです。どちらも最近出版されたらしい。
 読んでみようっと。

http://blog.drecom.jp/tactac/

今晩は。kuronekoさん。

>以下のブログに、三戸祐子さんの『定刻発車』(新潮文庫)、富井規雄『列車ダイヤのひみつ 定時運行しくみ』(成山堂)という本が紹介されています。

へー。面白そうですね。いつか読んでみたいな。

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