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July 31, 2005

東京都の災害対策住宅の不思議-----「待機」とは超過勤務なのか。

先日の足立区で起きた地震に関して、災害対策住宅に住んでいる職員の半数以上が都庁に集合していないということが問題になっている。

 東京都足立区で23日、震度5強を記録した地震で、災害時の対応のため東京都の災害対策住宅で待機しているはずの補助要員50人のうち、半数以上が東京都庁に集合していなかったことが27日、分かった。災害対策セクションの総合防災部職員らが登庁し、情報収集などに支障はなかったが、危機管理に対する意識が改めて問われそうだ。事態を重視した都では、集合システムを改善するため、登庁しなかった職員から事情を聴いている。(2005/07/28 産経新聞より)

僕は不明ながら災害対策住宅への認識がなかったのだが、同日の産経新聞によれば、

都庁周辺に約10カ所ある災対住宅に約200人が住んでいる。こうした職員は50人ずつが1週間交代で待機体制をとることになっており、待機時は都庁から徒歩30分圏内にいるように指示されている。

・・・災対住宅の家賃は3LDKで約5万円と新宿区などでは格安。居住する職員は常時、集合訓練を受け、2回集合できなかった場合は同住宅から退去させられるなど厳しい規定がある。

という。

今回都庁に集合しなかった職員は明らかに、この規定に違反しているわけであり、事情によっては規定どおり、この住宅から退去させられ可能性もあるという。報道の脈略に沿って読めば、破格に低額の住宅を提供されていながら、公務員として、災害対策要員として当然の義務を怠った職員に対して、退去を求めるのは当然にも思える。
また、災害における緊急性を思えば、都庁に対策要員ができるだけ短時間に集合するべきなのは、これもまた道理である。

だが、どうも引っかかる。

これらの職員は

「破格に安い住宅を提供される」

ことへの条件として

「緊急時30分以内に都庁へ集合する」

ことの義務を果たすことが求められるわけである。産経によれば「200人の職員が、50人毎に1週間交代で」とあるから、これらの人々に対しては、4週間に1週間ずつ、待機期間が求められることになり、1年間=52週として単純に考えれば、52÷4=13として、1人の職員は、1年間に13週は、24時間の体制で「待機」しなければならないことになる。

しかし、この24時間の「待機」とは「勤務」なのか。もしもこれが丸々「勤務」であるとすれば、24時間X7日X13週=2184時間の勤務が求められることになる。通常勤務が1週間に5日で、仮に1日7時間とすれば、通常勤務との差は、月曜から金曜までの平日においては17時間X5日X13週=1105時間。それに休日は24時間X2日X13週=624時間。合計は1729時間となる。

つまり災害対策住宅に住む職員は、年間に1729時間の「超過勤務」を行うことと引き換えに、低廉な住宅の供給を受けていることになる。

災害対策住宅は都内各所にあるが、新宿周辺に関して言えば月額5万円で提供される災害対策住宅に対して、周辺の家賃相場は30万円前後であり、およそ25万円の差額が生じるという報道がされていた。

計算続きで恐縮だが、そうなるとこの職員が1年間に受ける「差額報酬」は25万円X12=300万円となる。この300万円に対して、引き受ける対価としての1729時間について1時間あたりの単価を出すと300万円÷1729=1735円である。

「待機」とされている時間の多くが、夜間や休日であることを考えれば、この1735円/時間というのは、それほど高いものとは言えないであろう。それも、この時間における「待機」がそのまま超過勤務時間として換算されているのであれば、である。

いや、待て。もう少し細かく考えてみよう。

これが仮に超過勤務だとして、丸々労働時間に参入される場合、1ケ月あたりの超過勤務は1729÷12ヶ月=144時間となる。月間の通常勤務を完全週休2日として仮に23日として計算すれば、144÷23=6時間。何とこの職員は平均すれば、毎日6時間の超過勤務を引き受けて、この報酬を得ていることと同じになる。

通常の会社員の方ならお分かりになるとおり、常識的に1年間連続して月に144時間の超過勤務というのは、相当にタイトな職場であり、過労死が起きてもおかしくない。もちろん、この都の「待機職員」に過労死などが起きるわけはない。今回の出来事でもわかるように、これはあくまでも「緊急時のための」待機であり、ここに記したように、全てが超過勤務として扱われるような「勤務形態」の実態は、明らかにないからである。

おおよそ1729時間のうちの99%は、「平時」なのであり、(時には100%であろう)ポケットベルは鳴ることは無い。過労死すら引き起こすかもしれない一般の企業における勤務体制とは程遠い現状がある。

では、この1792時間とは、一体何なのか。

通常の人間が健康を損ないかねない、年間1729時間にも昇る「超過勤務」を、まるで「あったかのように」計算し、それに基づく報酬を支給し、数年に一度の「緊急時」に集合しなかったからといって職員を罰するという。

この制度そのものが、何かおかしくはないか。

もっとはっきり言えば、「災害対策」を口実にした、一部職員への利益配分とも見えるのであり、民間に比べて格段に安い家賃での住宅供与に対する批判をそらすための、「災害対策」であるという穿った見方もできるのではないか。

仮にこれを「超過勤務」として位置づけるのであれば、年に1729時間などという、とてもこなせない時間を強いること自体が無理というものであり、それが勤務ではなく単なる「待機程度の」状態に対してもしくは「カラ仕事」同然の勤務に払われる対価であるなら、過剰というものである。

災害対策を主として行うのであれば、この200人ではなく、全職員に対して災害対策のための無理の無い待機時間を割当て、それに対して超過報酬を出すというまっとうな考え方で都は対応すべきではないか。

あるいは、遠隔に住む職員では災害時に緊急対応できない、どうしても30分以内に住む職員に限りたいというのであっても、年間1792時間にも及ぶ一人当たりの待機時間を現実的なものに減らす(待機職員の数を増やし、1人あたりの待機時間を常識的なものに減らし、それに見合った報酬に下げる)などといった、現実的な方向での改善を図るべきだ。また恒常的に住宅に住まわせるのではなく、交代でこれらの住宅に泊り込み「待機」させるという、ローテーションを組むという方法をとれば、対象職員の数ももっと増やせるし、1人あたりの実質的な負担も少なく、また泊り込みの番が回るということであれば、意識づけの上でも効果が得られるのではないか。(ポケットベルが鳴ってもかけつけないなどいうことは、まずなくなるだろう)

さもないと、全てがまた「アリバイ工作」であると言われてもしょうがない。それほどの不自然さがこの話には漂っていると思うがどうだろうか。

言うまでもなく、災害対策に「アリバイ」めいたつじつまあわせは、非常に危険であり、都民としては非常に迷惑である。

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Comments

 

 こんにちは。

 最初のうちは制度の内容そのものがさっぱりわかりませんでした(笑)激しく珍妙な制度ですよね。変な喩えですが、数字の無意味な羅列を暗記させられるような気分になりました。人間が理解しうる因果法則に則っていないというか。

 災害時に都庁に人がいるべきだというのはわかります。しかしそれを達成する方法がこれって…。住民に理解しにくいような制度は、実施する公務員にとっても、ちゃんと理解して、責任を意識して、正確に実行するってのは難しいってことでしょうか。

 考えた人は良いアイデアだと思っていたんですかね?なんだか激しく頭だけで作った印象がありますが。それこそ住宅対策みたいなものも含め、一石何鳥とか思っていたのかも。よくそんなこと思いつけたなと、悪い意味で感心します。

 消防団みたいなものを念頭に置いていたんでしょうか?しかし、火事になったら普段の仕事を放って駆けつけるというシステムと、似ているようで全く違うような気がするのはなぜなんでしょう?こっちの方がはるかに意識と責任感を持てる気がするなぁと。

はじめまして。

この件って・・・憤りを感じてらっしゃる方多いんですね^^
しかし、実際に防災に従事しているメンバーは30人程度でその他は各セクションからの有志だとのことです。
それで・・・・西新宿に月5万で3LDKに住めるんだもの・・・そりゃぁ有志になりますって^^;
ぬるいなぁ・・・都庁勤務公務員。
今回担当で、登庁しなかったメンバーは即刻退去で実名をさらすくらいしないと、納得できないなぁ・・・・
と思っているのは私だけ??
もっとも、私もシステムの運用担当として業務に従事しています。で、システムに異常が発生した場合は迅速に夜中であろうと30分でタクシー飛ばして現地に行きますから・・・
それでも都内の1Kに自分の給料で家賃払ってますぜ^^;
できないことはないんだから・・・・事あったときくらいやってくれよって・・・・思っているのはわたしだけではないはずですよねぇ・・・・・

初めまして、こんばんは。

読ませていただいて、その通りだと思いました。
制度を妥当なものに変えることは都民の安全を守るために必要なことだし、実際に働いている職員にとってもプラスになることだと思います。
一部を不当に(?)優遇することを放置すれば、全体のイメージも悪くなりますし。

仕事がら、私も台風が来たときなど、会社から待機を命じられます。待機中は報酬はありません。呼び出しされて初めて仕事になるということらしいので。でもみんな頑張ってますし。
それを考えると、私は都民ではありませんが、おっしゃる通り変えた方がいいのではと。。。
読んでいて、なるほどなるほどと思うことばかりで。 
とても勉強になりました。ありがとうございました。

>ボクシングファンさん

>>考えた人は良いアイデアだと思っていたんですかね?なんだか激しく頭だけで作った印象がありますが。それこそ住宅対策みたいなものも含め、一石何鳥とか思っていたのかも。よくそんなこと思いつけたなと、悪い意味で感心します。

最初は、職員の「福利厚生」が主目的だったんじゃないでしょうかねえ。そこに大義名分が必要だったので、災害を後付けしたと。そんな気がしてならないんですが。

>ひろっちょさん

今晩は。

>>もっとも、私もシステムの運用担当として業務に従事しています。で、システムに異常が発生した場合は迅速に夜中であろうと30分でタクシー飛ばして現地に行きますから・・

私もシステム屋なので、全く同じですね。何かあれば駆けつけるのは、当たり前。せいぜい許されるのは、そのタクシー代の精算でしょうか。それにしても年間300万円にはなりますまい。


>ティアさん

今晩は。はじめまして。

>>仕事がら、私も台風が来たときなど、会社から待機を命じられます。待機中は報酬はありません。

批判の対象が駆けつけなかった職員にばかり向いているように思いまして、この記事を書きました。職員も悪かったかもしれないが、一番悪いのはこの珍妙な制度だと思うのですよ。

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