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October 17, 2005

それほど「楽天的」ではいられない。----「火車」のようなIT企業のトラウマ

tbs

10/16付の読売新聞によれば、楽天がTBS株15.46%の取得に要した資金は880億円。その多くを手元資金の活用や株式発行ではなく、複数の大手金融機関からの融資で調達しているという。

ライブドアがニッポン放送買収に際して使った転換社債型新株予約権付社債(MSCB)は、リーマン・ブラザーズ証券が、ライブドアの買収策がどちらに転んでも損はないように仕組んだフレームであり、堀江氏の「冒険的過ぎる」手法が注目を浴びた。

楽天の場合、こうしたリスキーな手法はとらなかったわけだが、2004年12月期の楽天の連結決算の経常利益は154億円。仮に1年間資金を借り続けたとすると、楽天の負担は10億円程度になると見られ、統合交渉に時間がかかれば、財務的には決して少ない負担ではないと指摘されている。

もっとも、楽天の高い時価総額からすれば、さしあたって金利負担の少ない1000億円程度の転換社債を発行することも可能であるとして、この見方は一方的であるとする論もあるようだ。
1株主が20%を超えると発動されるとされるTBSの新株予約権の存在を伺いながら、村上ファンドとの連携を持ちながら、さらに買い進める資金力はニッポン放送買収時のライブドアよりもむしろ余力がありそうだし、全体によく計算されている印象もある。

だが、ここで少し別の論点からこの話題を考えて見たい。

売上高の圧倒的に少ない楽天が(楽天455億円(2004年12月期)/TBS3,017億円(2005年3月期)TBSを優位に立って買収にかかれるのは、言うまでもなく、高い株価を背景にした時価総額の差によるものだが、(楽天約1兆円/TBS7,000億円)米国で同じような図式で推移したAOLとタイム・ワーナーの合併劇の顛末を見ると、一時的な時価総額に頼る資金調達がいかに危ういかが思い起こされてならない。

2000年の1月にタイム・ワーナーと、アメリカ・オンライン両社は対等合併をすることで合意した、と発表して世界を驚かせた。
新会社の売上高は年間三百億ドル(約三兆円)以上となり、活字、映像などの従来型メディアと、インターネットをまたにかけた巨大総合情報企業「AOLタイム・ワーナー」が誕生するというニュースは世界を衝撃的に駆け巡った。

このときの、タイムワーナーとAOLの時価総額は、AOL2500億ドルに対してタイムワーナーが1000億ドル.登場した新会社の時価総額は3,500億ドルとされた。
しかし、その後ネットバブルが崩壊し、AOLの業績は大低迷し、AOLを企業名からはずされる事態に追い込まれ、AOL創業者のキース会長も事実上、更迭された。
最近では、タイムワーナー社がAOLをマイクロソフト社に売却する交渉を進めていることが米国のメディアで報じられ、最近ではこれにグーグルも買い手候補として取りざたされている。

楽天とTBSに、AOLタイムワーナーの悲劇をそのまま安直に当てはめて考えることはできないし、地上波を中心にしてネットへの対応が大幅に遅れている日本のテレビ局が、「旧勢力」呼ばわりされるのは理解できなくもないが、現在の楽天は、その事業収益から考えれば、TBSを飲み込めるような規模の企業でないことは誰が考えても明らかであり、その資金源はその高株価が今後も継続することを前提にしている。
AOLタイムワーナー程ではないにしても、統合後の持ち株会社が支配する両者の時価総額は推定で2兆近くになるわけだが、それも楽天の破格の時価が維持できれば、の話であり、楽天の将来性へのマーケットの信頼性が落ちれば、すぐに時価は逆転する可能性がある。
そうなれば、飲み込んだはずのTBSに今度は楽天がイニシアティブを握られる可能性があるのであり、ここでAOLタイムワーナーの悲劇が思い出されるわけである。

楽天にしてみれば、資金調達力のある「今のうちに」より収益力を持つ媒体=テレビを吸収しないことには明日の高株価が維持できないという、ある種のジレンマにあることは確かであり、これはライブドアにしても、ヤフーにしても、ソフトバンクにしてもネット企業共通のジレンマ=火車のようなトラウマともいえる。つまりITという産業の「業」のようなものなのだ。常に次を「飲み込み」将来性へのマーケットの期待を裏切らないように走り続けなければならない。この産業ほど「堅実な成長」という言葉がなじまない業界はない。

よって、既存メディアの吸収に血道をあげる「性」に、明るい未来社会のメディアモデルばかりを強調するのも実態にはそぐわないように思う。特に楽天の現在の収益モデルが、時価総額1兆円というのは明らかに高すぎる評価であり、今後見通しにそう「楽天的」ばかりではいられないであろうし、三木谷氏はこのへんの危機意識は既に十分持っているように見える。

それにしても、日本のメディアを前にして三木谷社長が行ったという一時間近くのプレゼンテーションのほとんどが残念なことに報道されず、相変わらず敵対的であるか友好的であるか、TBSが負ける勝つかなどといった典型的なゴシップ趣味でのみ、報道がなされている現状は実に嘆かわしいと思う。結局、この国のメディアにとって、通信と放送の融合の有効性などといったテーマはまだ真剣に受け止められてはいないとしか思えない。
多くの報道番組の「評論家」も、楽天のやりたいことが何だかわからないとか、通信と放送の融合といっても具体性がないとか繰り返すのみである。具体性がないのは三木谷社長のプレゼンなのか、あなたの基礎知識なのか。

一方でAppleのiPodがついに動画対応して、podcastが次世代のコンテンツ配信媒体として、急速に表舞台の存在感を確立しつつあるのを見ると、ゴシップ報道と実体のないM&A騒ぎに終始している間に、今後のメディアシーンにおいて、日本企業全般にとって取り返しのつかない事態になってこないかと先が憂えてならない。

「通信と放送の融合」以前に、ここでもまた、「日米統合」されなければ良いが。

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Comments

TBありがとうございます。

私が言いたかったことがこのページに書かれていて、びっくりしました。これだけの長い文書をまとめるのって結構難しいんですよねー。

これからもよろしくお願いします。m( )m

TBありがとうございます。

本当に読みごたえのある記事ですよね!

最後のコトバが身に染みます。

>「通信と放送の融合」以前に、ここでもまた、「日米統合」されなければ良いが。

ホント、そうですよね・・・(^_^;)

>ひーさん

ありがとうございます。確かに、どのポイントをとらえるか考えるところです。このタイムワーナーの話も昨今忘れられがちな過去の話になってきていますけれどね。


>ビジネス加速専門家もりけんさん

実は「ネットと放送の融合」というべきでしたか。(笑)
もめているうちに、podcastかなんかに、持って行かれそうです。

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