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February 11, 2006

女王蟻の自由について-----皇位継承権は政治の問題なのか

女王蟻の存在は蟻の群れにとってどのような意味を持つのだろうか。女王という名にふさわしくなく、その生命と存在はどこか物悲しさを伴っている。働き蟻など他の蟻は一見女王にかしづき、女王が巣社会の頂点に立って君臨しているように見えるが、実はたった一匹の女王蟻は、子孫を増やすためだけに存在し、生きる。その女王を囲む働き蟻たちは、女王を崇め、保護するように見せかけながら、女王の自由を許さない。実は見方を変えれば女王蟻の側こそ、無数の働き蟻に囲まれた奴隷であると言う見方もできるのである。

天皇は日本国民統合の象徴だ。国民の意見が分かれている問題では、一方にくみする発言は控えた方がいい。これは皇族も同じである。
 天皇陛下は記者会見でたびたび女性天皇や皇位継承について質問されたが、回答を控えてきた。皇太子さまも会見で質問されたが、やはり答えなかった。
 おふたりとも、憲法上の立場を考えてのことにちがいない。
 寛仁さまひとりが発言を続ければ、それが皇室の総意と誤解されかねない。そろそろ発言を控えてはいかがだろうか。(2月2日 朝日新聞 寛仁さま/発言はもう控えては)

天皇を象徴と言う特別な位置に配したのは、近代の歴史の中でこの国が選び取った、重要な英知である。象徴と言う用語で天皇家の威厳を担保する一方で、政治的権力への一切の介入を阻止しようとした。しかし、一方でこの制度は、国民統合の基本部分を、天皇と言う曖昧で茫漠とした祭祀の存在に委ね続けることを、放棄したものではなかった。そのため政治的責任の頂点はいつもぼやけている。
原則論と言うよりも、特異な「政治的背景」に迫られて出来上がったこのシステムは、戦後60年間、とりあえずの平穏を我らに保障することには寄与したと思われるが、一方でこの領域に立ち込める深い霧は、ついに晴れることはなかった。

天皇の政治への介入を回避しようとしたその意図は、ある時代にあっては一定の合理性を持ったであろうが、皇族全般にまでその範囲を広げた場合、自分の属する係累の家督に関わる事項に関して述べた、寛仁殿下の発言までが一新聞社から批判されるとすれば、その合理的、あるいは法的な根拠は何だろうか。。

そもそも現在起きている(起きていた)女系天皇制に関する議論は、政治的議論であると言えるのかどうか疑問である。この問題は文化的問題であり、伝統的な問題に対する国民の対処の問題ではあるが、果たして「政治的問題」であると断言できるのか。つまり天皇が女性であるかどうかということ、あるいは女系で継承されるか男系で継承されるかということが政治的議題として扱われること自体に馴染むのか、その根拠は何かという問題になる。

朝日新聞の発言の論拠はまさしく、これが自明の「政治的問題」であることを前提に、寛仁さまの、重なる「行き過ぎた」発言に、サンクチュアリへの「介入」の要素があると見たのであろうが、皇位継承が政治的問題とは無縁であることを宣言するためにこそ、我らの現行憲法はそれを象徴天皇制という制度の下に封じ込めたのではなかったか。であれば皇位継承の問題を「象徴の周辺」で政治と切り離した論議が当事者たちによってなされることは、妨げられないと考えてもいいのではないか。

仮に皇位継承に関する意見の表明がいささか「政治的」な要素があるとみなしたとしても、寛仁さまは天皇そのものではなく、一皇族に過ぎない。皇族全般の政治への不介入は慣習としては守られていても、当の皇族がそれをご自分の意志で踏み越えようとしたとき、それを押し止める法的根拠は我々にも、国会にも、新聞社にもない。
現在のシステムは、そうしたことを敢えて試みる皇族が「今までたまたまいなかった」ということで、辛うじて担保されてきたに過ぎないのであり、このエリアに、積極的に「限界」近くまで言及しようという志を持った「非天皇の皇族」が現れ、意見を表明しようとした場合、批判しようとするなら、元来この問題のグレーゾーン性を意識した観点から、深い考察が伴わなければならないのではないか。朝日の社説にはそのスタンスが見出せない。

秋篠宮紀子さまのご懐妊は慶事ではあるが、国会での皇室典範改正論議がそれによって直ちに止まったことは何を意味するのか。立法府が元来政治の場で論じるにふさわしくない事柄を、専権事項のように一方的に論議を試み、偶然に起きた「政治的ではない」紀子さまのご懐妊でまたその論議を止める-----一見もっともに見えるこの一連の出来事の中で、問題を政治問題化させている主体の勢力はどこにいるのか。それは寛仁さまではないことはもちろん、皇族の側ではなく、立法府の側にあるのではないか。

そもそも、選挙権や被選挙権などの基本的人権を、曖昧な象徴天皇制というギミックを根拠に、皇族全般に対して大幅に制限していることへの、合理的な説明も、我らはなし得ないでいるのである。事由は日本国民であれば生来感覚的に察知しているところもあるだろうが、その不作為の継承が、美智子妃に続いて、雅子妃の深刻な精神の危機を招いた遠因になっているように思われるし、国際社会での立ち位置をよくも悪くも「神秘的」にしている。

正しく天皇家が政治的なものから距離を置かれるべき、伝統的かつ文化的存在であり、それを「象徴」と呼ぶなら、政治的意味での「特別扱い」は撤廃すべきではないのか。つまり、彼の家に生まれたことあるいはそこに嫁した事により、有無を言わさず、その人物の基本的人権を侵し奪う根拠を、我らは自明のものとしては持っていないのである。このことから逃げずに真っ向から見つめなければならないように思う。

男子親王が誕生しなかったときの、紀子さまをはじめ皇族の人々の精神的負担を思うと、同情すべき点がある。それを思うにつけても、彼らに基本的な「最低限の人間らしい生を営む権利」の付与をすることは、考えてもいい時代が来ているのではないかと思うし、朝日新聞がこのあたりへの提言を正面からすることを避け、一方で、浅薄とも思われる皇族批判を展開することには強い違和感を禁じえない。
皇室典範を立法府が論じることは止むなしとしても、ある程度の意見表明を皇族が行うことはむしろ自然ではないのかと思うし、雅子妃の問題もこの点に深く関わることではないか。少なくとも封殺する根拠はないはずである。

誰が誰を巻き込んでいるのか、誰の自由を奪っているのかという話である。

最後にkuroneko 氏のコメント。

男の子がいれば“跡取り”があって、財産も扶養も介護も「家」で担えるような時代ではないですね。家産のある家は少ないし、長男だから海外勤務はできませ んなんて会社に言える社会ではない。皇室に家族幻想をみて自分の家族と類推するのは多く女性で、側室なんて肯わないでしょうし、きっと次男の家の跡取りと 長男の家の総領娘とを比べて喋喋と世間話をしだす。「愛子様がお嫁に行って」、公団住宅に住んでスーパーでお惣菜を買う主婦になるのは、国民感情としてい かがなものか、という議論もありそう。

確かに、愛子様の運命の触れ幅は、理不尽までに大きすぎる。このことも、誰かの心をひどく痛めつける可能性があるとすれば、むしろそれにも心を砕くべきであろうし、それもまた政治の領域には馴染まないように思える。

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Comments

皇統が二千年以上にわたって男系維持の伝統ということについて、その理由を現実的な問題として考えれば、子の数を生す能力として男性の方が女性よりも有利だという生理的な事実に如かず、即ち、古来、皇族と雖も皇位継承に適う年齢に至るまでの子供の死亡率は高く、皇位継承資格者の予備を整えるには男系として側室を認める方が圧倒的に有利だったことが最大の理由であろう。
然し、現今および未来の時勢においてその伝統を受け継承することに如何なる価値を見出すかが問題で、実際は男系男子に拘ることが皇位継承資格者の数を狭めている事実をも勘案することが必要である。

また、「男女同権」を唱えるとともに「長子優先」を唱えることには大きな矛盾があり、同権を唱えるならば、「男女長末」を問わず同権とするのが道理であろう。

何方が天皇の後継者になるかは、一義的に天皇家の問題だから内閣の助言を受けて天皇家で決めて内閣が承認し、また、日本国の象徴・日本国民統合の象徴として天皇の地位にその方を認めるは、一義的に主権の存する日本国民の総意に基づかなければならないから、担ぐ御輿が我々の身の丈に合うか国民投票で最終決定するのが、日本国憲法の第1条と第2条の教法および国民の機根・時勢・国柄に適う手順である。

更に、男系男子に拘る方々のためには、天皇家の胤を世界文化遺産として登録し、今上天皇・皇太子殿下・秋篠宮の精子を冷凍保存して、何時でも復活できる体制を確立するのがよいだろう。

>更に、男系男子に拘る方々のためには、天皇家の胤を世界文化遺産として登録し、今上天皇・皇太子殿下・秋篠宮の精子を冷凍保存して、何時でも復活できる体制を確立するのがよいだろう。

え!何ですと。

BigBanさん:
お隣の国では“冷凍保存した卵子と精子を解凍して人工授精させ、受精卵を再び冷凍、解凍して母体に移植した中国内初の「三凍」試験管ベビーが、北京で1月26日に誕生したことがわかった”そうです。
http://j.peopledaily.com.cn/2006/02/10/jp20060210_57374.html
冷凍保存の有効期限は定かではないけど世界中から叡智を集めれば何とかなるではないかと思います、たぶん。
最も確実な方法は、例えば、今上天皇・皇太子殿下・秋篠宮殿下の精子を、男系男子を切望されている三笠宮寛仁殿下のお子様に人工授精する方法もあるでしょう、きっと。

なるほど。しかし


皇室典範に「精子卵子の保存と人工授精を許す」という一文を入れなければなりませんね。

BigBanさん:
皇室典範に「精子卵子の保存と人工授精を許す」という一文を入れる必要はないでしょう。
紳士淑女の社会では不文律の方が重要で、一々成文法を求めるのは幼稚な子供の社会でしょう、たぶん。
それと、知らなくても無事に過ごせるならば、態々騒ぎ立てて、扇情的報道をする大衆通信媒体の関係者に飯の種を提供することは有害無益でしょう、やっぱり。

>紳士淑女の社会では不文律の方が重要で、一々成文法を求めるのは幼稚な子供の社会でしょう、たぶん。

ごもっともでございます。失礼しました。

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