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February 14, 2006

遠い路----私たちの心の上に降る雪

韓国ドラマと言うと、橋田須賀子のドラマのように台詞の間がなく、かまびすしい印象がある。やたらと出演者がわーわー言っている感じがあって、「なわけねーだろ」なんてノリで冷やかしながら観るなら結構楽しいんだけれど、少し心が疲れているときや沈んでいるとき、静かにストーリーに浸りたいときには不向きである。冬ソナはもちろん、「天国の階段」や、あの大涙ドラマ「私の頭の中の消しゴム」もその例外ではなかった。泣けー笑えーっと画面全般から来る全力の念波が、それでなくても不安定な心には苦しいときがある。

そんな韓国ドラマのイメージを変えてくれたのが、「深夜のNews」でも紹介されている『遠い路』だ。

この作品を最初に見た時の印象は、自然の風景の美しさだった。この作品を見て、韓国の雪景色の美しさに驚いてしまったのである。そうだよな、韓国でも雪は降るよなと思ったのだ。そりゃあ当然、韓国でも雪は降るだろ、バカかオマエと言われると思うが、正直に白状してそう感じてしまった。
(中略)
例えば、雪が降っているとする。その雪を見て、京都や大阪にも雪は降るということと同じように、ソウルにも雪が降ることを思い、その降る雪の下で毎日を暮らしている人々のことを思う。ようするに、国際性とは、国際社会や異文化の知識をどれだけもっているかではなく、こうした人としてのあたりまえの感覚を持っているかどうかなのであろう。(
深夜のNews 韓国ドラマ『遠い路』より)

そうなのだ。美しい雪景色。映像は都市からすーっと韓国の雪の田園地帯に入り込んでいく。そのとき不思議な既視感が生まれる。日本と同じようでどこか違う風景。大切な思い出に結びついているような雪の韓国の自然と、2人の孤独な心がこのドラマでは、重ね合わせるようにじっくりと描かれていた。確か深夜のテレビで見たと思うけれど、非常に心に残るドラマだった。真魚さんとこの感覚を共有できているようでうれしく思う。

韓国ドラマには珍しく、台詞と台詞の間に、沈黙がある。まずこれが新鮮である。静かな雪景色の中、それぞれの思いを持ちつつもそれを抑えながら故郷へ向かう2人。恋人に捨てられたソンジュと、父を安心させるために俄か恋人を押しつけられたウシク。ウシクは家族を知らずに孤児院で育った天涯孤独の青年である。金目当てでソンジュの願いを聞き入れて気の進まない旅に同行したウシクが、次第にソンジュの父に心を開くようになっていく。

おそらくウシクは自分に欠けているものを意識しながらも、それを認めず、せいいっぱい虚勢を張って1人生きてきたのだろう。一見軽薄で計算高く見えるが、肩肘をはった裏に秘められた孤独と、それでも人を、家族を求める押さえ切れずあふれる慕情が、ソンジュの父に会うことで雪解け水のように彼の心の奥から滲み出てくるのがわかる。そんなウシクの姿に驚きながら、次第にウシクに惹かれていくソンジュの戸惑いも、韓国の雪の田園の風景の中でじっくりと描かれていた。

おそらく雪は、1人で父の元に帰れないソンジュの寂しさであろうし、ウシクの孤独であろう。その雪を溶かしていくソンジュの父の笑顔がいい。両親のことを思える人はおそらく両親を思い出すだろう。

去年初めてソウルに行ってから、なじみの薄かったハングルが身近な言葉になり、とっつきが悪かった韓国料理が懐かしい味のように感じられるようになった。若者で溢れるミョンドンで人の波に流されながら、我らと彼らの上に降る雪に変わりがないこと。そのことを本当に知らされたのは、実は僕もつい最近のことだったのだ。

日本に紹介されている中では異色の韓国ドラマであると思う。

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Comments

BigBangさん、こちらからTBをしておきます。
そちらからはTBできませんでしたか、うーむ、なんでやろ。

「遠い路」は韓国ドラマでは異色の作品でしたか。他のものを知らないので、韓国ドラマって、みんなこうしたハートフルなのかなと思っていたのですが。

僕は香港には行ったことはありますが韓国はないんです。こうしてドラマで見ても、やはり韓国は日本やアメリカとは違いますね。正直に白状しまして、僕はこれまで韓国を国際社会の上のひとつの国として観念的に見ていただけで、そこで暮らしている人々のことまでは意識していなかったと思います。このドラマを見ながら、日本と韓国は言葉も文字も全然違うし、地理的には近いのに、ものすごく違う国であることを強く感じていました。このドラマの中でも、日本海を東海と呼んでいるところなどは、そうだろうなあと思いました。

でも、この全然違う世界に、雪景色ということで「同じもの」が、ばあっと広がっているのを見て、うわあと思ったんです。つまり、日本と韓国はものすごく違っているのに、それでもその中に「同じ空間が広がっている」という「発見」だったんです。そして、その「同じ」である1点をもって、今度は逆に「違う」韓国に親近感を感じるようになりました。違うものの中に同じものがあって、それは美しい自然の風景だったり、都会で暮らす若者の孤独感だったり、故郷の父親が娘を思う心であったりしていて、それらを自分もまた感じることができます。そう考えた時、僕は自分の中の韓国に対する見方が変わったように思います。韓国を「国」としてではなく、そこで生活している人々として見るようになったように思います。

見終わった後、心に余韻が残るいい作品でした。
パク・チニはいいですよね(笑)。

この作品で韓国ドラマに出会ったとは幸せだと思いますよ。僕なんか冬ソナですもの。(月並みですいませんね)

互いの上に同じ雪が降ることで彼を知る

その感覚は凄くわかります。その国には多くの人たちが暮らしている。こればかりはなかなか想像するのが難しくて、メディアばかり見ているとソウルでは全員日の丸焼いてるんじゃないかと思うときがある。ソウル市庁の前の反日デモはよく放映されるんだけど、どんな凄いことか思ってあの前に立つと愕然とします。そのささやかさというか、場所としてのこじんまり感。札幌の時計台というか。。(?笑)

空間が繋がっているというリアリティを感じてしまって逆に恐ろしくなることもありますね。アウシュビッツなんてその場所に立ったら、自分はいったいどんな気分になるんだろうと思う。想像が出来ません。

追:大事なことを書き忘れた。


パク・チニはいいです。

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