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May 26, 2006

人を殺さないITと2007年問題----海辺のプラントで考えた

今日は、海沿いのエネルギー関連大手企業の人材教育担当者を訪ねて、社員教育システムについて話を聞いてきた。

急速な景気回復を受けて、国内の大手製造業では雇用不足が顕在化している。この企業でも長く新規採用を控えてきたこともあり、現場作業者の年齢分布が高年齢化して50代になっている。40代後半より若い世代は極端に少なくなってきている。それに対して景気回復により、新規雇用は急速に拡大しているために、新たに現場配属になるのは前年度比5倍の人数。一方で退職者は、今後15年間で団塊の世代を中心に、現在の作業者の85%が退職する。

勢い、問題になってくるのが「技術の伝承」である。何十年にもわたって蓄積してきた大型プラントの操業技術などは、人から人に伝えられてきた「技」。なのだが、ここのところの長い不況とその後の極端なV字回復により、技術の継承に支障が出るような、世代の「ホール現象」が発生している。若年層の教育指導ができるような、熟練した工員の極端な不足が見込まれており、現場技術が低下する可能性がある。事故や操業停止などのトラブルがあれば、即賠償問題にも波及する。かつてない規模の人員の空洞化のしわ寄せがこのような形で懸念されているのである。全産業にわたって2007年を中心に多くの退職者が発生することから「2007年問題」とも呼ばれている。

少し調べてみた。

団塊の世代、中でもこの世代でもっとも多い1947年生まれの労働者たちが、2007年に60歳を迎え、定年退職することにより、企業活動に大きなダメージを与えるという問題をさします。この問題は、2005年度版の『ものづくり白書』でも取り上げられ、全産業の約22%、特に製造業では約31%の企業が危機感を感じているとの意識をもっているとされています。

 2007年問題として、つぎの三つが指摘されています。

(1)労働力不足の問題
 約300万人といわれるこの世代の労働者が一定期間の中で大量にリタイアしていくことで、深刻な労働力不足に陥ることが予想されています。日本企業は現在、労働力の不足を免れるために、積極的に新規採用を行っています。一時期よりも採用市場が好転したのは、このことも要因のひとつであると考えられます。

(2)ノウハウ、技術継承の問題

 ベテラン労働者の大量リタイアは、今日まで培われてきた高度な技術やノウハウの継承を途絶えさせる危険があります。欧米企業と比較して、組織内で属人的な働き方をする労働者が多い日本企業では、ノウハウを持つベテラン労働者がリタイアすると、その労働者と共にノウハウや技術が企業から失われてしまいます。また、経験から得られたいわゆる「暗黙知」についても同様です。これらをいかに企業の資産として残すかという課題に企業は取り組んでいますが、そのためには多くのコストを要し、困難を極めているというのが現状です。

(3)企業体力低下の問題
 大量に退職者が出ることに伴い、企業が支払う退職金も増加します。このことで、企業は自身の体力が奪われ、設備投資など積極的な戦略がとりづらくなってしまいます。

 この問題は、少子化やニートといった労働市場における問題とも連動し、日本企業に多大な影響を与えることが予想され、各企業の国際競争力の低下が危惧されています。

マーケティング用語集・2007年問題より)

ふーむ。

今回お会いした人材教育担当者は、この退職していく熟練工の代役として、彼ら自身の経験や知識をパッケージした教育システムを計画しており、その点に関して打ち合わせを重ねているのである。経験のない新人の現場作業者に、現場の危険や危機管理をシミュレーションしようということも考えている。

かつて、景気の下降局面において、僕たちは自嘲を込めてITを「人殺し産業」と呼んでいた。企業にシステム導入を売り込む一番のセールストークは、「これでXXX人の人員が削減できます」というものだった。つまり「何人殺せます」みたいなものだ。世に言うリストラであるが、人件費の節減は採用担当者にとってはもっとも目に見えやすい導入メリットであったからだ。導入を勧誘していてもどことなく後ろめたい思いがあった。これでまた何人の仕事がなくなるか、明確にわかるからだ。

ところが時代が変わり、かつての省力化と極端な人員削減を、今度はまたITシステムが埋めようとしている。しかも今度は人減らしの道具ではなく、極端までの人材節減・効率化と大量退職によって生じた、技術継承の「穴」を埋めるために導入されるという。

ITが主導して減らした人間の「つけ」を、今度はITが別側面から補う。何とも皮肉な話であるが、これもITのひとつの側面である。

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Comments

ああ、業界のどの辺りというのが手に取るようにわかったりして(笑)

技術の継承というのは、実は10年ぐらい前から業界では問題になってまして、
有り体に言えば人を減らすこととリンクしていた問題でもありました。
コスト競争力を上げるためには、人件費が最も手をつけやすいわけですね。
企業と従業員のあり方という根本的な問題にもなり、まあそういった根本まで
何とかしようとすると、やはり政治になってしまうのですが。

話を戻すと、10年ぐらい前からIT(オートメーションも含めて)による効率化と
技術の継承を進めているのだけれども、やはりなかなか技術的に難しい部分が多い
ですね。人間の勘というのはとんでもなく鋭く、まだまだ太刀打ちできない部分が
多い。でもここに、芽があるとも思いますね。合理化=人減らしではあるんですが、
逆にその芽を育てる分野に新しいビジネスなり人材が育つといいなと。

Hermesさん、どうも。

人件費はバランスシートに出てきますが、技術の伝承力などという「資産」は計上されませんから、潜在的な問題が表面に出てくるのに時間がかかりますね。私は大企業に勤めたこともないし、製造業にはうといので、あまり真剣にこのことを考えたことがなかったのですが。

>人間の勘というのはとんでもなく鋭く、まだまだ太刀打ちできない部分が
多い。でもここに、芽があるとも思いますね。合理化=人減らしではあるんですが、
逆にその芽を育てる分野に新しいビジネスなり人材が育つといいなと。

御意。健全な(という言い方もへんだが)ITのあり方の活路がありそう。ヒルズとかそーいう話じゃなくてね(笑)

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