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June 15, 2006

後部座席(その3)

あれから20年以上の年月が経った。
あの日警察で固い床に跪いた彼は今頃どうしているのだろうか。

少年と書いたが、実はよく考えれば僕とそう年は変わらない。1人を死に追いやり、1人を生涯回復できない重症に追い込んだ彼のその後の人生は厳しかったであろうと想像する。

現場には事故の数週間後くらいに、行ってみた。車がスリップした後はまだ生々しく残っていた。バス停の近くで対向車線に追い抜きのためにはみ出した彼は、対向車にパニクッて逆に急ハンドルを切り、歩道に乗り上げた。にも関わらずさらに混乱し、信じられないことだがアクセルとブレーキを踏み間違えたのだ。車は歩道の敷石に上がったところでさらに加速し、バス停に突っ込んだ。
事故を見た人の話も聞きに言った。どんな細かいことも知りたいと思った。伯母が亡くなる時の様子をできるだけ細かく聞くこと。あれは仕方がない事故だったのだと納得をすることを求めていた。
今覚えば、事故の不可避性を自分に納得させることで、あの日跪いた少年を許すための道を探していたような気がする。

そしてこの20年間、伯母が亡くなった日のことを、何度も何度も頭の中で追体験してきた。夢にも何度も見た。夢の中で、あの日の事故を何度も何度も体験した。
少年の車は、僕の頭の中で幾度も幾度も同じように登場し、あの場所で加速し追い抜きをかけ、幾度も幾度も歩道を乗り越えて、同じようにバス停へと突っ込んでいく。目を覚ますと、汗をびっしょりかいていることもあった。

ある日見た夢は、伯母がまさにバス停の方へ歩いていく場面であり、僕が必死にそっちに行ってはいけないと呼びかける。そして伯母がその声に応じて「わかった」と笑顔で、事故の起きたバス停ではない方角へ向かう。ああよかった、これで事故は避けられたと思ってそこで目が覚めたこともあった。

でもさすがに長い時間がたった。1人残された伯父も数年前にこの世を去った。伯母の事故を思い出すことも、稀になっていた。夢も最近は見なくなった。

ところが今回の一連の出来事があってから、不思議なことに、僕はまたあの時の事故のことを思い出すようになった。

オウム事件は、僕の経験したこととは比べようもない、大事件であり、多くの人が亡くなり、多くの人がきっと僕よりも遥かに厳しい思いをした。比較してはならないだろう。
にも関わらず、僕は自分の人生の中で、多少とも「被害者」としての経験をしたこと、そして「加害者」に対する思いを味わったこと、周囲の人たちへの「被害者の立場」からの理不尽な憎しみを持った経験を、つまり伯母の事件の経験をオウムの事件に重ねようととしたのか。それで事故のことを思い出したのか。

でも、単にそれだけでは済まなかった。僕はもっと奇妙なことを考えるようになった。それはあれ以来、これほど何度も事故のことを繰り返し考えてきたのに、今までただの一度も考えて見なかったことを、である。


あの少年の車には同乗者がいなかったのだろうか。

(この項続く)

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Comments

 最終回、長くなりそうですな。フリ的に。
 でもまあ、少々長くなってもキチンとまとめて終わらせること重要ですね。
 起承転結・追記補記、くらいの感覚が宜しかろうかと。

 自分にとっての辛い話や忌まわしい出来事は思い出すのも書くのも厳しいことかと思われますが、んだからこそ、書くと決めたときは、キチンと後腐れのないようにされたし。

 人が何を言おうがどうだろうが、そんなこととは関係なく、己の人生の一こまに収める努力。重要。

 できなきゃ阿呆。そんだけ。

こんな時にこんな話が。朝日新聞からです。
http://dat.2chan.net/19/src/1150376845437.jpg

>できなきゃ阿呆。そんだけ。
finalventさんのマネだけど、おまえが言っても自分の馬鹿晒してるだけだなw

「私」君。
モノカキにも編集にもなれず、短文をうまくまとめることもできず。
コピーライターだとしたら、200本にひとつリクルートで採用されるにすぎず。
まあ、あそこだから通用したんでさ、平らな席ではちょっと厳しいかな。

 「通用」とか言ってる時点で痛痒ね。

 遊びに逝った先で通用してもしょうがないでしょに。
 採用されたくて動いてるわけじゃないんだから、採用基準で見られてもねぇ。

 せいぜい働いてろって感じ。

>私
R30のところコメントが少なくて
寂しそうだよ。
行ってあげれば。

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