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June 04, 2006

「仮想報道 われわれはみな”隠れオウム”の容疑者」(週刊アスキー)の問題点について

週刊アスキー(2006年6月月13日号)掲載記事で、特に問題があると感じるのは次の一節である。順序が後先になるが、これについて認識されていないコメントも散見するので、確認の意味からも再掲しておく。

質問書
とその回答も参照して欲しい。

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●「オウム信者でないこと」を証明できるか

実質的により深刻な被害を受けたのは、泉氏にサーバーを貸していた男性かもしれない。「この男性こそが、『オウムの謀略』をたくらんだ黒幕」といった声が上がり、憶測にすぎないそうした話もネットで広まった。
 これまた唐突な疑いに思われるが、泉氏のブログに書かれたこの男性自身の文章によれば、こうした話には会社が神経を尖らせるシステム関係の仕事をしていたこともあって、結局、会社を辞めなければならなくなったという。 
 疑惑を知った会社は、オウムと無関係だと証明するよう求めてきたそうだ。 
 しかしこれは、言うはやすく、行なうのははなはだむずかしい。
 この男性は、オウムと関わりがないことを警察に証明してもらおうとしたところ、警察は、「まず、あなたがオウム信者でないことを警察に証明してください」と言ったという。
 笑い話のようだがほんとうにそうなのだ、と書いている。

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※ここまでの著述は確かに歌田氏が回答してきたとおり、明らかにネット取材で知りえた事実を羅列してだけであると言えるだろう。単に歌田氏はGripBlogに掲載された、ume氏の退職の経緯をそのまま「伝聞で」記載しているだけだ。

しかし、記事はここからトーンが変わる。


    ----------------------------------------------------

 警察は、「隠れオウム」を全員知っているわけではないかもしれないし、知っていたとしてもそうした微妙な情報を持っているとは言いたくない。だから、嫌疑を晴らすことまではしてくれないわけだ。

 さて、そうしたとき、あなただったら、どうやって「オウムでないこと」を証明するだろうか。おそらく誰もできないのではないか。

そういう意味では、われわれはみな潜在的に「隠れオウムの容疑者」だ。
 泉氏やこの男性についての疑いの広がり方を見ると、そうした極端な話が、かならずしも極端とはいえないように思えてくる。(
「仮想報道 われわれはみな”隠れオウム”の容疑者」より)

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この青字の部分で、記事はいつの間にか、ume氏に起きたことが事実であるという前提に立っている。さらに、一気に私たちもいつオウムの容疑者であると不当な疑いをかけられかねないとリードすることにより、この男性に起きたことがいかに理不尽であるか、あるいは自分の身に起きたらどんなに恐ろしいことであるかを、断定的に印象付けている。警察が疑惑を「晴らしてくれない」ことも、自明のことのように書かれている。

さて、読者はここまで読み進んだとき、これがネット上で公開されただけの、「裏づけのとれていない話である」と読み取ることができるだろうか。あるいは、記事の筆者がこの事実を全く裏取りをしていないことを読み取ることができるだろうか。

おそらくそれは無理であろう。ここにこの記事の問題点がある。

歌田氏は回答の中でこう語っている。

また、私は、口頭で述べられたことよりも、文章として記したことのほうが証拠能力は高いということも常々思っています(いうまでもありませんが、どちらも虚偽の証言をすることはできますが、テープを回して公開でもしないかぎり、言った言わないの水掛論争になりがちな口頭の証言に比べて、ともかくもネットで書かれたことは残っていて公開されているという意味です)。というわけで、ネット上で公開されている情報をできるだけ使うようにしています。

しかし、取材源を相手の「口語」からとるか「文章」からとるかなどということは、この問題への答になってはいない。「文章なら後々残るから言った言わないの問題で有利である」というのは、瑣末な取材者側のテクニックの話であり、取材源の裏づけをとるということとは、基本的に関係がない話である。

通常は、証言者の話が真実であるか、誇張がないかを検証するために、被取材者以外の第三者の発言や、証言者の証言の合理性、一貫性を精査するはずである。その結果、不自然な点があれば、その発言を元にした記事の基本が崩れることになるので、殊更に慎重を期すべき作業である。

メディア関連で仕事をされている方にとっては、基本中の基本であるはずである。それが「ネットで書かれたこと」の名の元に承認されるとすれば、ネットジャーナリズムとは、書いたことに責任をとらない無責任の体系であることになる。

まして、ことはオウムというナーバスな問題である。IT業界の噂話を書くのとは訳が違う。取材者はあらゆる可能性を疑ってしかるべきであり、その取材者の姿勢が読者以上に、一貫して厳しいものであることによってこそ、記事として信頼に足るものになる。少なくとも、裏づけをとっていないならいないと、記事中に明記することは最低限すべきであろう。

そうした意味において、なされるべきことがなされずに、未確認の事実にお墨付きがなされるような形で流されたことは誠に残念であると言わざるをえない。質問書を出したのも、この点に強い違和感を感じたからであり、この件に関して歌田氏が言う「何らかの意図」などというものは当方にはない。

もしも(あまり可能性はないと思ったが)歌田さんが独自取材をした結果、たどり着いた結論であるなら、それはそれで状況の一歩前進になったのであるが、どうやらそれはありえないことだったようである。

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Comments

裏取りをしていない記事は普通、ゴシップ記事と言いますよね(クライアントから報酬を得て、クライアントに利益をもたらすために一方的に書かれるのは記事広告ですが)。
ゴシップ記事を書いたらゴシップ記者だし、それを載せたらゴシップ誌ですよね、普通。
ITライターがネットで書かれたことの一面だけを切り取って論じた感想文だからって、ゴシップはゴシップだ……。

umeさんは「?」だけど、泉氏、歌田氏は共通して、その名前での活動を収入に結び付ける意図があるわけで。
私はジャーナリスト云々よりも、まずそれに対する責任感の不足を彼らに感じます。
歌田氏については、あの記事を書いて原稿料をもらい、有料媒体に掲載したことへの責任(これは週刊アスキーにも問われることですが)。
泉氏については、「参加型」の美名の下に読者を巻き込んだことへの責任。巻き込まれたお一人がBigBangさんだと私は認識しています。

歌田氏は自身の責任を棚上げにして、「疑問を呈したり検証を行う者は、疑惑の対象者と同等のリスクを負わなければ信頼されない」と?
わけが分からないんですけど……。

余談ですが私、もし泉さんやumeさんが歌田さんの取材を受けて掲載を了承していたのなら、結局ネットより紙媒体を信頼したっていうことで、それはそれで構想終焉の象徴だなあ、と思っていました。

どこぞでもちらと指摘されていました
「泉氏やこの男性についての疑いの広がり方を見ると、そうした極端な話が、かならずしも極端とはいえないように思えてくる」の部分、
主体が省かれていることで、
……ように(あなたも)思えてくる(でしょ?)
と読ませるようにもリードしつつ
……ように(私には)思えてくる
という意図だったんですと後で言い逃れもできる作りになっているあたり、さすが文章の証拠能力を重視される方だけあって、慎重。プロの技ですねえと感心してしまいます。

http://eiji.txt-nifty.com/diary/2006/02/post_6e74.html
と以前大石英司氏も歌田氏について批判をしていましたが…
 
大石氏からのTBは残し、その後暫くしてからいくつかのエントリーで弁明をしたのに比べるとここまでBBさんへの反発になったのは編集部にもメール、なんでしょうかね。

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