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August 01, 2006

地平線近くの太陽--「歓びを歌にのせて」を観て

Yorokobi

あっち方向では考えていることも、迷っていることも多いのだけれど、なかなか言葉にしにくい。というわけで、関係のないことを書いてみる。

ストックフォルムに行ったのはもう15年くらい前になる。その頃の仕事は、今とは違ってあちこちに忙しく移動することも多かったので、その延長にたまたま、ストックフォルムがあった。ストックフォルムはぎりぎりで白夜にならないことは最近知ったが、そのとき太陽はやはり一晩中、地平線付近をさ迷う様に徘徊していたが決して沈まなかった。

で、夜中にホテルの窓を開け、夕方のようにしか思えない薄明の街並みを見たときには、それは想像するほど楽しい気分でもなかったのである。まさにその頃仕事にも、仕事の人間関係にも、ぎりぎりまで追い詰められていたこともあり、異国情緒を楽しむ余裕もなかったこともある。

その後こうして生きているということは、その仕事も、その仕事上の人間関係も、きっと「どうにかなった」のだろう。では「どうなった」のか、それはもう覚えていない。

で本題。

最近ビデオで観た「歓びを歌にのせて」はスウェーデン映画である。(ストックフォルムの薄暗い街を思い出したのは、きっとそのせいだろう。)ある名を馳せた指揮者の心の再生の物語といっていいだろうか。いい思い出のない故郷に、疲弊し果てて帰ってくる主人公の造形は、「ニュー・シネマ・パラダイス」のトトを思い出す。もっとも本作品の主人公、ダニエルはおそらくトトよりも、深く傷ついており、そんな彼が故郷の村の聖歌隊の指揮者になり、かつて純然として音楽にかけていた心を取り戻していくという物語である。

と言う風に書くと、物語の組み立てとしては、あるパターンに添っていることは確かなのだが、ラストシーンの表現が何ともかんとも、収まりが悪いというか、落ち着かないというか個性的。関心のある向きは映画を見てください。

で、スウェーデンという国は一方で性的に解放されているとばかり思われているのであるが、その一方で大変に保守的な社会を持つ国でもある。訪れたときにも、よそ者に簡単に心を開かない国柄のようにも、思えた。フランスやイギリスで味わうような、黄色人種への差別意識とは違う。もっと彼らの側に深く内在する、他者を容易に寄せ付けない感覚のようなものがあり、それがこの映画の舞台である保守的な村、ユースオーケルの雰囲気にも色濃く反映されているように思ったのが、所詮旅行者。一定の期間住んだわけでもなく、話をしたスウェーデン人と言えば、僕がヤケになってかけた日本への国際電話代の破滅的な値段に、呆れ果てていた、ホテルのフロントの女性くらいしかいないのだから、これ以上賢しらぶることはできないのでスウェーデン論はこのくらいにする。

で、この映画を見て思ったことは結局のところ、人はどん底まで落ちたときには、自分を救うことばかり考えていては、もう一度浮かび上がることはできないのではないかということである。ただ浮かび上がったところところで、そこにあるのはパラダイスとは限らないのだが、そこで見るのが例え荒れ果てただけの世界であっても、やはり浮かび上がってみるべきなのである、と思った。

「歓びを歌にのせて」は2005年のアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたという。肌触りは変わっているが見る価値はある映画であると思う。

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Comments

>ある人さん

本エントリーに関係がないコメントだと思いますので、しかるべきエントリー箇所に書き込んでください。終われば教えてください。その処置がされない場合には、削除させていただきます。

よろしくお願いします。

【加筆】
#お待ちしましたが、ご回答がないので、先のコメントは削除させていただきました。尚、それに伴い、「ある人」さんのコメントを評した方の、いくつかのコメントも同時に削除させていただきました。ご了承ください。

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