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November 23, 2006

赤いアルファロメオ

Romeo

どかっとテーブルに置かれたド派手な大型の青いヴィトンの手帳を見たら、わっと思って、おーさすが業界だと思ったが、すぐに反射的に赤い車の映像が頭をよぎった。アルファロメオだ。

渋谷の桜丘の裏の裏のほう。昔一緒に仕事をしていた知り合いが転職した。しかも「その方面」の業界だというので、遊びに行った今日の夕方のことだ。「その手」というのは、・・・・・「その手」と言ってもわからないか。つまり「柔らかいビデオ」方面だ。「柔らかいほう」わかった?笑

業界独特の香りのようなものが会社中に立ちこめている。机の上には独身の男の子がお母さんに見つかったら大変なことになってしまいそうなDVDが乱雑に置かれているが、オフィス全体は妙な清涼感に包まれていて、地味とはいえない若い女の子も沢山働いている。香水の匂いがきつい。

この空気を「懐かしい」と思ったのは、20代の一時期、カメラマンの真似事をしていた時代に、自分がほんの少しだけその業界の空気を吸ったことがあるからだ。もちろんネットもない遠い昔だから、媒体は紙だった。当然ながら食えていなかったので、朝起きるとなんとなくその事務所に行って、一日仕事がなくてもそこのボスが食事だけは奢ってくれたので、暮らしていられた。

写真の仕事は「柔らかめのホテル」(笑)とか、撮ってくるもので、もちろん、ちゃんと事前に許可をとるんだが、客の手前があるので、ライターの女の子とペアを組んで、普通のカップルのようにしていくのだから、ちょっとドキドキしたものだ。とかじゃなくて凄くドキドキした。僕とよく組んでいた女の子のライターは、この間まで高校の国語教師をしていたと言っていた。最初の仕事は雪の日で、二人ともガチガチに緊張して押し黙って、写真を撮っていた。

それでも何件もそうした仕事をこなしているうちに、毒々しいラベルの写真に何があろうと、撮影した部屋のビデオにどんな映像が飛び出してこようと、驚かなくなった。粛々たる普通の仕事になっていったんだ。

不思議だったのは、その事務所のほとんどの社員が揃って赤の「アルファロメオ」に乗っていたことだ。それ以来僕にとってアルファロメオのイメージは「そうした業界のクルマ」になった。今目の前にどかっと置かれた青のヴィトンの手帳には、そのアルファロメオを久しぶりに思い出させる力があったのだ。なにか通じるものがあるのだろう。

知り合いは、4年ぶりに再会した僕を歓迎してくれて、まるでエイベックスみたいな別室へ通し、システム担当者を紹介してくれて、(彼が持ってきたのがヴィトン手帳だったんだが)その人と、しばらく最近のネット事情とか、彼らの仕事のこととか話をしたが、これは凄く面白かった。

その手の事務所としては、まあ「ちゃんとしている」というか大手である。刺激的ではあるが、目を背けるような抵抗感もない自分というのがいて、懐かしく思っている。そして何といってもネットの最先端は彼らの業界のものなのだ。Windowsサーバで展開しているライブチャットの苦労話とか、そして彼らの独自のビジネスモデル(これは書いちゃうと社名がわかっちゃうから書けない)の構築の話とか、そしてエンジニアがやはり不足している話、SQLサーバの話、まもなく登場するVISTAの話とか、はたまた女の子のマネージメントの苦労話など。

話の性格が性格だから、詳しく書けないのが残念だけれど、ああやっぱり今でもこの業界は、毎日がおもちゃ箱を引っくり返したみたいだ、変わらないなあと思った。蠢いている出演者達は、極彩色の孔雀のように、みんな派手で毒々しくとことんアヤシイのだけれど、とにかく途方もなくエネルギーに満ちていて、世の中のトレンドラインをゼロとすれば、常にそのラインから上のほうを見て、つんのめって仕事をしている。
一般のビジネスをしていると、そのゼロのラインの近辺で背伸びすると、「尖がりすぎている」などと言われて、知らず知らずに、そこよりもマイナス5ポイントか時には10ポイント差し引いたところで仕事をしてしまうことが多い。下がってしまうのね。
で、そのあまり気持ちの良くない状態に長い間のうちに慣らされてしまっている自分がいるわけだ。ところが、その手の業界だと、これはもうフルスロットルだ。

一歩でも他社に遅れることは死を意味する・・・という、ここのすさまじさというのは、ある意味IT業界以上であり、合法と非合法の際の部分で勝負している命知らずも沢山いる世界だから、その中で「安定して合法に勝っていく」ための、冷静な計算と知恵も必要になる。まあこのへんは、あまり肩入れしすぎるわけじゃないけれど、おおよそビジネスの基本が、ぐしゃっと変形されてはいるけれど、全部がおせち料理のように詰まっている世界なのだ。で、それは時にたまらなく魅力的である。

もちろん人間の欲望をナマで相手にする商売であるし、しかもその対象は多感な年頃の男女(苦笑)であるから、近い視点で見ればもちろんうざい部分は沢山あるのだが。

一緒に同行したS君が、たまたま転職先を探してる最中だったので、「あそこいいじゃん、入っちゃえば?」とけしかけたが、「来春結婚するんですよ僕。あそこに入ったなんて知れたら、ダメになっちゃいますよ」とオジけていた。いまどきそうかねえ?そうか?やっぱり?

僕は結局あの20代のころ、「その業界」を選ばなかった。それは体面とかそういうことではなく、何か「大事にしたい」(という言い方も変だが)人間にとって一番ディープな生理というか感応というか官能というか、そこを日常のビジネスとしてこなしていく自分の姿というのは、ちょっと詰まらないのではないか、きついなと思ったのが最大の原因である。

しかし21世紀の今、Web2.0なんぞと小ざかしい言葉が飛び交っている中で、彼らの作ろうとしているものは確実に、とっくの昔からその先を見ているわけでWeb3.0とかWeb4.0くらいぶっとばすぞみたいな勢いでやらないと、それこそ、はみ出してしまう。自分がその加速の中でどこかへ飛ばされてしまう。今あの業界に身を置いていたら、どんな人生が広がっていただろうか。今頃自分は何をしていただろうか。

そんなことを考えながら帰り道。

桜ヶ丘の坂道を降りながら、街灯を見上げたら、僕がついに選ばなかった赤のアルファロメオが、頭の中を全速力で駆け抜けていったのが見えたような気がしたのである。

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