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December 31, 2006

「黄泉の犬」(藤原新也)を読んでいく(4)--麻原・水俣病説への疑問

このエントリーに滝本太郎弁護士からコメントをいただいた。「黄泉の犬」に関する見解が氏のブログに書かれているというご案内だったので、行ってみた。
麻原は「水俣病」を患って目を悪くしていたのではないかという、この書の中でも愁眉の部分に関しての見解である。

●「備忘録-黄泉の犬」(同上)

●「再び「黄泉の犬」について。」 (同上)

●「「黄泉の犬について-3」」(『日常生活を愛する人は?』-某弁護士日記)

滝本氏は麻原の「在日朝鮮人説」「被差別部落出身説」と並べて、藤原新也の「水俣病説」に強い疑問を提示されている。その根拠としては、麻原の長兄の証言全般に関する疑念である。

●藤原は、麻原の「水俣病説」を、一番上の長兄への取材によってのみ書いている。他の兄弟に対して全く裏づけをとっていない。

●この兄は「教祖になってくれ」と麻原さんから言われた、などとも言っているが、他の麻原といつも行動していた旧い信者の誰もそういったことは言っておらず、カルトの特性からしてもあり得ない。

●麻原は生まれつき片目が見えない。もう一方の目は進行性で見えなくなってきていた。たとえ八千代でシャコを食べていたとしても、出産後に水俣病になった可能性はほとんどない。

●胎児性水俣病に関しても、麻原にはその他の水俣病に特徴的な症状は一切ない。シビレ云々なども、あったと言っているのは長兄だけ。そもそも麻原の目は、神経性の視覚障害ではなかった筈。

さらに、麻原が実際には被差別部落の出身でもないのに、それを偽装して部落出身の信徒を出家させたことがあるなどを挙げ、あるいは水俣病も偽装してもおかしくないことを示唆している。他にも、藤原新也氏の取材がそこかしこで雑であることにより、本自体を信頼することができないと語っておられる。(後半のインド放浪に関する部分は評価しておられるが、メメント・モリなどはお読みになっておられないようだ。)

僕には、俄かにいずれとも判断しがたいが、昔からの藤原新也の読者の立場から言わせてもらえば、藤原新也という人は、取材した事実の積み重ねから演繹的に事実を追求していくというよりも、典型的に帰納法の取材方法をとる人であると言っていい。
つまり、強烈な精神的なインスピレーションをもとに、自らの感性が打ち立てた仮説を、結論とすべく、取材を重ねていくタイプであり、その結果、著作は非常にスピリチュアルな迫力には満ちているが、反面、客観的な合理性に欠ける部分がある。ということである。
その面では、確かに滝本さんの言われる諸点を見れば、取材が足りない、あるいは思い込みが先行して極端な結論を導き出している可能性もあるかもしれない。

麻原がもしも水俣病であったとすれば、そこに多くの人は何らかの「意味」を見出そうとするであろう。(もちろんこれは「被差別部落」でも「在日朝鮮人」でも同じである。)それがわかっていながら書かれた藤原の文章は、一種独特のスピリチュアルな雰囲気を醸し出す技術が高いだけに、本人からの再反論と合理的な追加取材がないと、俄かに内容を信じるのは危険であると今は考えている。

その見方をとる人は多いようで、いまひとつこの衝撃的な内容が込められた本が評価されていないように感じるが、藤原自身は、タブーを扱ったことにより、社会から忌避されているように感じているようである。


【参考リンク】


【書評】麻原彰晃の誕生 / 高山 文彦(London bridge)
によれば、田口ランディ氏や瀬戸内寂聴氏は、藤原新也の視点を絶賛しているそうであるが、このあたりにはまだ目を通していない。

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Comments

藤原新也さんの主な関心は、アメリカン・ルーレット以来の仮想現実が取り巻く現代人の変化にあると思います。
造花のお花畑、ディズニーランドのようなショッピングモールやプラスチックの石像を林立した庭、新興住宅街。

ちょうど黒崎さんの「仮想平等」と対になります。

来年が良い年になりますように。

黒崎さんと並べて評する視点は思いつきませんでした。
ともあれ、トリルさんもよいお年を。

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