SNS

My Photo

BooksBooks

無料ブログはココログ

« 新年おめでとうございます | Main | オーマイニュース----内部通報にあたって実名を推奨するのは時代の趨勢に反する »

January 04, 2007

オーマイニュースを巡る匿名性の問題について(2)---小倉弁護士に答える/ 心苦しいが鳥越編集長には勇退をお奨めする。

この件に関して、小倉弁護士から再度の反対エントリーをいただいた。

オーマイニュースに2ちゃんねるの亜流になることを望んでどうなるのか。(la_causette

誰もそんなことは言っていないし、望んでもいないわけで。

そういう意味では、「市民記者が望むならば対読者匿名性を保障すべきだ」という批判は、安易に取材源を秘匿する既存の日本のマスメディアの無責任さをオーマイニュースにも押し付けようとしているにすぎないものだということができます。ファクト系の記事に関していえば、「実名が重んじられ、匿名が軽んじられる」ことは、当然のことなのです。

対読者匿名性を保障する意味は、自己の安全性を保障しながらも、匿名で社会的に異議のある「ファクト」を提示しようという言論を保護するためのものである。なぜそれが自動的に「既存マスメディアの無責任さをオーマイに押し付けることになり」「実名が重んじられるのは当然のこと」となるのか。
氏は「安易に」と作為的に語を補足しておられるが、「安易な」措置に関する批判は両論に成立するのであって、「安易でない=熟考された匿名(実名)主義が相互の議論の基本となる。(それにも関わらず鳥越編集長の実名主義は「安易」であり、それは後に触れる)
このあたりは小倉弁護士の個人的立場が実名主義であるから、そこから導き出された意図的な論理であり、これを応用して私が「匿名保護」の反対言説を張った場合「水掛け論」になると思う。

「取材源を秘匿する」という約束は、そのような約束をしてでもその情報を報道する価値があるという例外的な場合以外にはすべきではないし、そのような約束をした場合にはこれによる不利益は記者や報道機関が負うというのが、アメリカン・スタンダードです。)。オーマイニュースは、韓国版からスタートし、英語版が日本語版に先行していますから、日本語版においてもこの「市民記者の実名原則」が採用されることは、鳥越編集長の意向にかかわらず、既定路線だったと思われます

「アメリカン・スタンダードがそうである」とか、「先行する韓国版がそうであるからとかいう理屈は、議論の本質を不明確にするだけであり、意味がないと考えられる。私は何も、韓国や米国のオーマイニュースの運営方針を日本では適用するべきではないと言っているのではない。この件に関する、乱雑で感情的な編集部の説明に関して批判している。

米国や韓国がそうであるから、ではなく、

・なぜオーマイニュースは実名を推奨するに至ったか
・実名の内部告発者や通報者がいた場合、どのように保護されるか
・善意の匿名の言論に対する考え方

について説明を明確にした上で、悪意の言論者への対抗措置をすればいいのであり、それを冷静に合理的に説くこともなく、「卑怯な匿名の2ちゃんねらー」などという発言で、オーマイニュースを「アンチ2ちゃんねらーの巣窟」レベルに堕したのは、他ならぬオーマイニュース編集部の責任である。

今になって、それも全く部外者の小倉弁護士がいくらオーマイニュースの立場を擁護しようとも、ナンバー2と目される平野日出木さんがようやく

OhmyNews:【極私的2006年回顧】 言われたら、言い返そうぜ Web2.0

言いたいことは言っていこうと元旦に決心された段階。このレベルでは、オーマイニュースの「匿名保護」の決意の真摯度を信じろというほうが無理である。

また

「見解の分かれる政治的な問題を論評した」からといって罵倒を浴びたり人格攻撃を受けたりすること甘受しなければならない理由はないわけです。また、揚げ足を取られる余地が全くないとまではない記事を書いたからといって罵倒を浴びたり人格攻撃を受けたりすること甘受しなければならない理由はないわけです。

「甘受しなければならない」のではなく、対応すべきは対応し、ひどいものはスルーするなり、削除なりすればいい話。ひどいものにはアクセス禁止や名誉毀損による対抗訴訟もありうるだろう。そういう「試練」の元に、論壇系ブロガーは皆日々発言を行っている。小倉さんもそうしているだろう。なぜ言論組織(この場合はオーマイニュース)に属した途端に保護されなければならないか。

そもそも、市民記者は「ジャーナリスト」ではなかったのか?薄謝とは言え、報酬を受けるプロであろう。「ジャーナリスト」であれば取材の過程でそうした「攻撃」をされることへの、技術的・かつ精神的な修練と、対応能力を持つことは要求されるのではないか。「市民記者」だから、あるいは「アマチュアのようなものだから」過剰に攻撃するのはおかしいというのであれば、公的空間で論議を呼ぶ記事を投稿することを最初から編集部は市民記者に求めず、記者も身辺雑記にとどめればよい。
匿名の発言者を封じて、こうした「攻撃」を封じ込められたとして、そのような安全な水槽の中で発言を続けることにどれほどの意味があるのか。それを感受する「ネットジャーナリズム」とは何なのか。ネットで発信することへの覚悟が足りないのではないか。

※Wikiについては別次元の議論になるのでここでは割愛する。

つまるところ(小倉弁護士のサイトのコメント欄で触れてくれている方がいるが、)私の立場は、前回のエントリーで書いた

問題は記事やコメントの質であり、実名・匿名の問題ではない。匿名で口汚い投稿が増えるリスクを唱えるなら、それに対峙して実名では思い切った発言や記事が寄せられにくくなるという、市民メディアの理念の根本に関わる問題、そして記者や投稿者の立場保全の問題が同時に語られなければバランスを欠くが、これまでのところ鳥越編集長にはその姿勢が感じられないと思う。

に尽きるのである。一方的な匿名論に立っているわけではない。実名のメリットとデメリット、匿名のメリットとデメリットには、それぞれネット上でも行われた膨大な議論がある。

実名とハンドル名の狭間における確執纏め(適宜覚書はてな異本)

おそらくネット上の議論の流れなど全く追っていないと思われる、鳥越編集長が匿名言論に対して、不用心で配慮を欠く一方的な感情的不快感を表明した。それが問題の出発点であり、オーマイニュースに対して、匿名主義をとれなどと言うつもりもないし、それは無意味なことである。
そうではなく、実名主義をとるに至った思考の基盤を明らかにするべきであるということである。先行する韓国や米国の状況を事例として並べても、それは論理基盤とはなりえない。

小倉弁護士は、整然とした(少なくとも鳥越さんに比して、であるが)明らかな実名主義の言論を張っておられるが、これはこれでわかる。わかるが、これも一般的実名主義の言論の一隅でしかないのであり、オーマイニュースの編集部の主張ではない。小倉弁護士は、オーマイニュース側の考え方を代弁する当事者の立場にはないからである。

実名主義をとるならとるで、その理由をオーマイニュースはもっと明確に、しかもスマートに明らかにすべきであった。どうしても編集長の個人的資質に(ネットでの情報発信に関するリテラシーの致命的な欠如)因を求めてしまうが、時系列でざっとこの問題に関する鳥越編集長の発言を追ってみても、それは明確である。

●2chはネガティブ情報の方がどちらかというと多い。2ch見ていると罵詈雑言が多い。それはそれ で、人間の負の部分のはけ口だから、ごみためとしてそういう部分があっても仕方ない。ぼくらはごみためでは困るので、日本の社会を良くしたい、変えたい。 変えるための1つの場にしたいという気持ちがあると思う。(Itmedia岡田記者の起こした鳥越氏への取材テープから


●「あそこまでヒステリックな対応があるとは思っていなかった。ゴミ溜めというのは・・・ここにITmediaの人いる・・・?いない?・・・僕は確か全部じゃなくて一部のって言ったと思うんだけどなあ。」
人間が本来持っているネガティブなパッションが、匿名になったとたんに出てしまう。2ちゃんの女子アナサイトを見たら(スレのことか)ひどかった。レイプ寸前のことが書いてある。で、これは人間のゴミで捨てなければならない場所になっていると。決して全体をそう言ったわけではない。」(早大におけるブロガーとの対話シンポジウムでの発言(ITmediaはその後反論))

 


匿名の書き込み掲示板「2ちゃんねる」のいわゆる「2ちゃんねらー」と称する輩に敢然と正面か ら論戦を挑んだ音羽記者の「死ぬ死ぬ詐欺・まとめサイトの卑劣さを考える」が出色ですね。この記事のいいところは、感情的にならずに自分が分からないとこ ろは「分からない」と言いつつ、「2ちゃんねらー」の言い分の最大の卑劣さを「君たちは心臓病の恐怖を一度でも味わったことはあるのか?」というかたち で、間違いなく今病気に冒されている患者のことを推測と憶測だけで攻撃する「2ちゃんねらー」と称する連中の弱点をずばっと切っている点ですね。(10月の月間市民記者賞に音羽記者を選出した時の発言
 


●---編集長が自ら匿名の掲示板を批判する発言も反感を買いました。
「あそこに書かれていることは本当にひどい。彼らが反発してくるのは想定内で、僕の挑発に乗ったな、という感じだ」(12月17日朝日新聞

果たしてこれが「バランスのとれた」発言といえるだろうか。いずれも匿名=悪であり無責任、実名=責任のとれる発言という先入観、自説のリピートでしかない。

「実名」で堂々とモノが言える時代は確かに素晴らしい。そうした社会がやってくれば、確かに理想的に「フラット化された世界」が実現されるのかもしれない。しかし、現状は違う。誰もが特権的に言説に伴うリスクを担保されるわけではない。その過渡的(かもしれない)社会において、リスクを背負えと人に言うなら、それを呼び掛ける側も然るべき体制を整えてから、あるいは少なくともその方向性を示してから、それを言うべきである。そうでなければ、それこそ「言いっぱなし」の既存メディアと変わらない。

直近のJ-CASTニュースのインタビューでは、鳥越編集長はこのように発言している。

●僕らではわからない専門的な記事もありますから、そういう人が来てくれればしめたものかなぁと。中央官庁の役人が、実名で内部の腐敗を書いてもらえると活気付くと思いますね。鳥越俊太郎に聞く(2) ネットでも実名文化がいい

中央官庁の役人は言うまでも無く、国家公務員である。国家公務員が実名でそのような行動に出た場合、おそらく公務員の守秘義務違反で国家から訴訟を受ける恐れがある。その場合、オーマイニュースは、どのような対処をとる覚悟があるのか。仮に裁判で負け、50万円を超える膨大な損害賠償請求をされた場合どうするのか。金銭の問題以外にも、メディアとしての姿勢が社会から厳しく問われることになろうが、そうした点についてはどう考えているのか。この部分については鳥越編集長は「実名」でと言っている。「ペンネームでもいいから」とも「場合によっては匿名でもいいから」とも言っていない。

鳥越俊太郎氏という一人の人間に特化して発言を批判的に追いすぎると、あるいは小倉さんは言うかもしれない。しかし、彼はオーマイニュースの編集長である。あなたは部外者である。また、オーマイニュース編集部でこの点に関して有効な言論を提出しているのは、「コンサルタント」の佐々木俊尚さん以外には見当たらない。

僕は「旧メディア」における鳥越俊太郎という「ジャーナリスト」の過去の功績には敬意を持っている。氏自身も誇りにしておられるようであるが、桶川ストーカー事件における、「ザ・スクープ」での鳥越さんの粘りは見事だったし、喝采を送ったほどである。
しかしながら、はっきり申し上げるが、過去のご薫陶にも関わらず、私は鳥越俊太郎氏には、一刻も早くオーマイニュースから勇退されるのが、ご本人のためにも、オーマイニュースのためにも有益であると思う。鳥越さんが病の中から、使命感を持って、参加型ジャーナリズムの未来に、あのご年齢からエネルギーを注がれようとされている姿勢は、後塵を拝す者としては最大限の敬意を感じるが、何しろネットリテラシーがなさすぎる。

ネットリテラシーがないということの意味は、単にぶくまのやり方がわからないとか、「たまたま」JanJanを見たことが無かったというだけにはとどまらない。つまりそれは、ここ数年ネット界において繰り広げられた主たるトピックや言論の流れ(例えば実名匿名論は専らネット内で展開されている)に、ほとんど無知のまま、ネット言論の中心的媒体となることが期待されている(いた)オーマイニュースの総司令を委ねられたということである。初期のトンデモ発言の数々は、鳥越さんのジャーナリストとしての全体的な資質から来たものではなく、ひとえにネットリテラシーの欠如と、それによって引き起こされている「無知」によるものである。


編集長はメディアの顔である。編集長が発言した内容は、個人的な意味を超えてそのメディアによるメッセージであるという受け止め方をされる。
どうか、後続の有能な人材に編集長の座を禅譲されて、経験豊かなアドバイザーか論説委員という立場から、ネットジャーナリズムの発展に尽力をされることを望む次第である。


【参考リンク】
●鳥越氏の無責任な「責任ある参加」論(木走日記)
●書評 - 怪文書(404 Blog Not Found)

« 新年おめでとうございます | Main | オーマイニュース----内部通報にあたって実名を推奨するのは時代の趨勢に反する »

Comments

鳥越編集長は勇退された後、匿名ブロッガーになられるのもよいかもね。で、思いっきり嫌われてください。そこまでキャラをだせないかもしれないけど。とにかく実力ないものは退場してほしい。

BigBangさんの別ブログで下記見ましたが、 http://d.hatena.ne.jp/BigBang/20070111/p1
辞められるみたいで……。

私としては鳥越さん本人のことは好きだけど、お時間がないから……。ネットの感覚自体に慣れるには時間がかかるし、適切な対応や判断が、縁遠かった方にはなかなか見えにくいし、炎上対策とか難しいですしね。

ワープロのみですが、私の父が昨年PC始めました。鳥越さんより年長ですが、メンテ等を私がやれば充分やれてます。

全く新しいスタイルに馴染むためには時間がかかりすぎる。
鳥越さんが今回も乗り切られたとしても、折角の鳥越さんご自身の時間がもったいない。

新聞記者やコメンテータースタイルのままで活動を続けられたほうがはるかに有意義だと思います。
父とて十年先はどうかはわかりませんし、一度大病なさった鳥越さんでは、より時間が限られる可能性が初めから大です。
そもそも、そういう意味でも、BigBangさんは鳥越さんが勇退すべきだという意見なのではないかと思っていました。
編集長より、初めからアドバイザーのほうが良かったのかもしれませんね……。

ご本人からも、否定コメントが出ていますね。でもおそらく、曖昧なことを言っちゃったんじゃないかなあ。電話取材に対して。
鳥越さんは嫌いじゃないですよ。一回でも飲みに行ったら、もう駄目でしょうね。
自分のフィールドでしっかり仕事をしていただきたいと思います。何も、誰も彼もネットやる必要なんかないんですよ。

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/28156/13329958

Listed below are links to weblogs that reference オーマイニュースを巡る匿名性の問題について(2)---小倉弁護士に答える/ 心苦しいが鳥越編集長には勇退をお奨めする。:

» 2ちゃんねる準拠のネットリタラシーよりグローバルスタンダードなジャーナリズムとしての倫理を [la_causette]
 「オーマイニュースに2ちゃんねるの亜流になることを望んでどうなるのか。」という [Read More]

» 年またぎ企画:コミュ論15/11「コンテンツの分類・送り手篇・文体」 [スポンタ通信2.0]
メディア時代は、主体・文体・意志の三拍子そろっていなければ発信できない。だが、メディア時代の発信者は、いったん発信権を獲得すると、発信権維持のために意思表示をしなくなる。というのが、私の結論である。☆☆次は、文体。何故、このような概念を提出したかといえ...... [Read More]

« 新年おめでとうございます | Main | オーマイニュース----内部通報にあたって実名を推奨するのは時代の趨勢に反する »

-