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March 17, 2007

堀江被告に懲役2年6ケ月の実刑判決---「無反省」と「脅迫」

執行猶予なしの実刑判決は、最近の日興コーディアルの例などから見ても、重すぎるという声が多いようであるが、判決要旨からまとめてみた。

(1)ライブドアの自社株売却益の利益計上・架空売上計上について

→投資事業組合は脱法目的に結成されたものであり、売上計上の許されない自社株売却益を記載した虚偽の有価証券報告書を提出、架空売上を前提とした連結経常利益が記載された虚偽の有価証券報告書を提出することを認識、認容し、宮内被告との間に共謀が成立する。

(2)ライブドアマーケティング(LDM)における虚偽事実の公表について

→LDMがマネーライフ社との株式交換に関して行った04年10月25日の公表の一部に虚偽。11月9日の公表も虚偽。堀江被告は虚偽事実に基づく業績状況を公表することを認識、認容し宮内被告との間で共謀が成立する。

(3)宮内被告と検察との「黙契」が成立しているという弁護側の主張を退ける

→検察官と宮内被告らとの間で、別件を公訴提起しない代わりに検察官の主張に沿った供述をする約束が成立しているという弁護側の主張を、第三者による宮内被告供述の裏づけにより、退けられるとして否定する。

(4)意図の悪質さ

→粉飾額自体はそれほど大きくないが、証券市場の公正性を害する極めて悪質な行為として認定。投資事業組合を介在させるという手口の巧妙さなど、企業利益のみを追求し一般投資家を犠牲にする犯罪として悪質である。

(5)堀江被告の権限

→堀江は、ライブドアの創業者であり、唯一代表権を有する代表取締役であり、トップとして絶大な権限を有していた。いずれの犯行も被告の指示・了承無しには実行はあり得なかった。

(6)無反省な被告

→被告は公判廷でも不自然な。不合理的な弁解に終始し、株主や一般投資家に対して謝罪の弁も述べない。反省の情が全く感じられない。

(7)各犯行を主導とまでは認められないが、実刑に値する

→いずれの犯行も宮内が中心となって計画したものであり、検察の言うように被告が最高責任者として犯行を主導したとまでは認められないが、そうした斟酌の事情を最大限に考慮しても実刑をもって望まざるを得ない。

目に付くところとしては、まず(1)において、投資事業組合を脱法目的であるとして断定し、自社株売上計上を違法と断定したところがみられる。かつて堀江は保釈後に「サンデープロジェクト」に出演してこのように語っていた。

堀江:(投資事業組合の金の流れについて)いや、それはこんなのを粉飾だということ自体がまずおかしいよという話です。そもそも我々、投資事業組合、僕が知ってる知らないは別として、客観的事実を前提にしても、これはファンドにまず実態があってダミーなんていうものじゃないよと。(検察がダミーといっているのは)彼らの定義であって、我々は実態があると思っている。検察はライブドアのダミーだと言っているが、そうじゃなくて独立した存在であってライブドアが支配しているわけではない。まったく別個の存在であると。だから連結する必要ないでしょうと。連結をしてない会社からの分配金なんだからそれは売り上げに計上していいでしょうと。客観的事実についてもこれは粉飾ではないと言っているわけですよ。堀江貴文の「サンデープロジェクト」出演について(BigBang)」)

本来ライブドア連結の対象ではない投資事業組合の活動を質すること自体がおかしいとする堀江側の主張は取り入れられなかった。また、投資事業組合によるライブドア株取引を、売上に計上するという手法が、当時の法規に照らして本当に違法であるかどうかは、議論が分かれた箇所である。


田原:で、公認会計士たちも違法じゃないって言ってるわけですね。

堀江:ものすごく難しい仕組みなんですから、本当は。要は難しくって会計士だってこれが100%正しいっていう風に言えないんですよ。検察の言い分が100%正しいって言う事が出来ないくらい会計的な専門的なことなのに、しかも会計士が大丈夫って言ってるのに我々会計の素人が違法だ合法だの判断が出来るわけないじゃないですか、そもそも。 (同上)

当時の公認会計士が大丈夫と言っていたとあるが、港陽監査法人で、当時ライブドアを担当していた田中慎一氏の「ライブドア監査人の告白」を読むとだいぶ様子が違う。


著者は、1999年から今年1月にライブドア事件が起きるまで、同社の監査を任されていた港陽監査法人の公認会計士である。同監査法人からは在宅起訴された者も出たが、著者は同社の犯した偽計取引や風説の流布、あるいは粉飾決算の疑いに直接手を貸した人間とは見なされず、訴追を免れた。しかしながら自らの意思で公認会計士の資格を返上し、今後は会計関連の職には関わらないと宣言した。同社の犯罪行為を見抜けなかったことへの“けじめ”だと言う。

本書を執筆したのもけじめの1つであろう。ライブドアの内幕を知る人間として、子細な具体例を示しつつ容赦なく糾弾していく。堀江貴文被告を含む旧経営陣に対しても同様に厳しい評価を加える。架空取引による粉飾会計については、事件の前から「何かがおかしい」と感じ取っていたにもかかわらず正せなかったと猛省しつつも、「シロかクロかはっきりせず、どこまでいってもグレーのまま。当局の捜査とは違って会計士の監査手続きでは限界がある」と弁明する。(Amazon書評から)

この本の帯には「投資事業組合を解散しなければ監査を降ります」と印刷されているが、事実筆者はそうした「脅迫」を何度も駆使して宮内を揺さぶらざるを得なかった。監査人が降りることは、それほどライブドアにとって大きな圧力となり得たのである。

つまり田中氏は、存在する「らしい」投資事業組合の存在を、極めて疑義の深い監査上問題のある存在であるとして、繰り返し内情報告を求めていたのであるが、宮内らによって、別組織であり連結対象外の組合の実態を明らかにするいわれはないとして、突っぱねられている。

問題は、こうした「突っぱね」に対抗する有効な手段を監査人が持ち得なかったことは事実であるということであり、こうした意味で当時の法制度の中での真空地帯であったという見方もできる。果たして投資事業組合は、「実質的にライブドアに支配されて」おり、「自社株売却による利益操作組織」として完全にライブドアに従属していたといえるのか。現在までの経緯を見ると、僕は、この点に関して堀江の認識はかなり曖昧であったような印象があり、組合は専ら宮内の「私的利益のための操作装置」として稼動していたのではないかという印象がある。この点に関する法解釈や認識が今回の判決で厳密にされたとは言い難い。ここは残念に思うが、おそらく掘江側の弁護団は控訴審において、この法的不整備の問題を突いてくると思われるので、引き続き注視したいと思う。

もっとも、田中氏はこの本の中でで監査人としての力不足も同時に痛感したと告白しており、最高経営者としての責任すらも、裁判に影響があるからと明確にしない堀江被告の姿勢とは遠いのも印象的であり、「反省」の表面的な表明すらしない堀江の態度を正直ととるか、傲慢と取るか。ここでの世間の評価は、容易に予想されてしかるべきものである。

思うに、形式的反省であっても、それは反省の表明には変わらないのであり、その裏における哲学や人生観などは、所詮形式では表明できないものなのだ。その人間を人間として許せるか、許せないかは法を超えたもっと深い部分に繋がっていると思われ、その暗がりへの訴求が困難である以上、人は所詮形式による表明の次元にしか、合理的批判を集中できないのではないかと思われるからである。

その次元で戦う堀江を支持する動きもあるのは理解するが、彼の今後の人生を考えれば、徒労感は否めない。もちろん合理的な部分では事実関係をしっかりと争えばいいのであり、そうした姿勢と反省謝罪の姿勢は、両立するし、またさせていかなければならないものではないかと思う。

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