SNS

My Photo

BooksBooks

無料ブログはココログ

« 麻生氏はやはり情報を開示すべきだった。----密室禅譲の時代の終わり | Main | 乱数表で死刑を執行したらどうかと言った鳩山法相 »

September 26, 2007

セカンドライフのベースとなった小説「スノウ・クラッシュ」に描かれた未来は最高にクールだ

Snow

1992年に書かれたニール・スティーブンソンの大傑作。奇書とさえ言っても過言ではないだろう。米国ではベストセラーになっているが、日本国内でそれほど話題になったという記憶はない。アスキーが単行本を出した後、早川SF文庫より上下巻出版されているが、在庫が尽きたか、(現在書店ではまず手に入れることはできない。マーケットプレイスなどに頼るしかないが・・何てこった!理由は後で。)

物語の時代。既に米国はなく、世界は「フランチャイズ国家」によって細分化され、軍閥のような国家群が覇を競っている。リアルの世界と巨大なコンピューターネットワークで構築されたバーチャル世界を自在に行き来して、コンピュータウィルス「スノウクラッシュ」の謎に迫るのは、凄腕のハッカーにして剣士、そして未来社会では限りなくクールなピザ配達人であるという奇想天外な英雄、ヒロ・プロタゴニスト、そして「特急便屋」の少女Y.Tは15才。2人は謎の解明を求めて遠い過去と未来を繋ぎながら、「二つの世界」を疾走する。彼と彼女ののスピード、凄まじい未来社会のコンピュータイメージ。サイバーパンク小説の迫力を読者に十二分に伝えてくれる。いや、この小説は米国では「ポストサイバーパンク小説」の代表作として称えられた。

間違いなく傑作として米国で評価されながらも、そのあまりもの奇想天外、突飛過ぎるイメージのせいか、日本では話題にならなかった(と思う)この小説だが、今一部で注目が集まっているのは、あの「セカンドライフ」のリンデンラボ創業者、フィリップロズデールが、セカンドライフの主たるイメージはこの小説の中にあると、発言しているからである。「メタバース」という言葉も、この小説によって初めて使われ、具現化された。

【参考記事】
リンデン・ラボ訪問記
社内にはビリヤード場、「週に1度はセカンドライフ」が社則

ここで若干、説明を加えておく。ローズデール氏の仮想空間への構想のもとには『スノウ・クラッシュ』(ニール・スティーヴンスン著)というSF小説がある。ローズデール氏は同社設立の数年前に、妻に薦められて読んだこの小説に触発され、リアルとリンクした形で繰り広げられる仮想世界の立ち上げを考えるようになったと聞く。


そう思って読んでみると、確かに近未来のリンデンラボの目指す世界、セカンドライフの未来の萌芽を、到る所で感じることができる。ひとたびゴーグルを装着すれば、その瞬間から主人公はアバターになって、メタバースに飛び込む。ピザ配達はともかく、「剣士」に格別の尊敬が集まる「気風」は現在のセカンドライフでもそのままであろう。主人公ヒロは黒人を父に、韓国系日本人を母にもつ設定であるが、おそらく作者の頭の中に、日本の剣、サムライのイメージに加えて、現代日本のSFやアニメ文化の潮流があることは間違いないだろう。日本人は「ニッポニーズ」として、醜くも恐るべき物語上の確固とした地位を与えられている。

もっともセカンドライフで具現化されたイメージとかなり異なっているところも、多くある。中でも意外なのは、「スノウクラッシュ」には「インターネット」という言葉が全く出てこないこと。ニール・スティーブンソンは、メタバースの巨大なネットワークを、光ファイバーと衛星によって構築された巨大な世界規模のLANとして描いたが、1992年という状況がそうしたのか、それに「インターネット」という明確な言葉を与えていない。ネットワークはあるいはフランチャイズ国家が張り巡らした、マスメディアの行きつく究極の世界とも読めるのであり、彼をもってしても、インターネットのここまでの興隆は読み切れなかったか。

さらに、ディテールはセカンドライフユーザーであれば実に楽しめるものばかりだろう。例えばヒロ達はすでにキーボードからは解放され、装着型のウェアラブルコンピュータ=ゴーグルによってインワールドに「イン」するが、セカンドライフのようにテレポートはせずに、メタバース内でもモノレールや車に乗って何万キロメートルも疾走する。現実世界において富を持つ者は、豊かな解像度を誇るアバターを所持するが、貧しき者はモノクロの貧弱なアバターを使う。既に現実世界のインフラは、ブレードランナーの世界のように頽廃にまみれており、メタバース世界の英雄であるヒロもリアル世界では裏町の貧弱な家に住む。そしてY.Tの愛犬の心を持って生まれ変わった「ネズミモドキ」の、アバターたちを脅かす、凄まじい破壊力。

あるいは我々にとってそう遠くない未来の世界の姿は、過剰なまでの圧倒的な存在感をもってこの小説に描かれている。そのメタバース時代への入り口を、未だ未熟な姿ではあるが、リンデンラボ他の数社が既に実現しつつあるという今日の状況を見ると、如何にニール・スティーブンソンの描いた世界が、とてつもなく「リアル」であり、予言性があったかがわかる。いや、むしろこの優れた小説イメージが、IT経営者たちの心に火をつけたのだ。

ここに描かれる未来は、あるいは耐えられないものかもしれない。既に世界はイカレテイル。壊れている。しかしそのぞっとするはずの我らの未来は、決して暗いイメージではなく、それどころか、この上なく「クール」なのだ。

是非一読を薦めたい。僕はもう3回も買ってその都度人に配ってしまった。


※あれ、マーケットプレイスの商品に軒並みプレミアム価格がついてるぞ!

« 麻生氏はやはり情報を開示すべきだった。----密室禅譲の時代の終わり | Main | 乱数表で死刑を執行したらどうかと言った鳩山法相 »

Comments

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/28156/16576213

Listed below are links to weblogs that reference セカンドライフのベースとなった小説「スノウ・クラッシュ」に描かれた未来は最高にクールだ:

« 麻生氏はやはり情報を開示すべきだった。----密室禅譲の時代の終わり | Main | 乱数表で死刑を執行したらどうかと言った鳩山法相 »

-