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May 04, 2008

ビルマ、パゴダの影で-----ビルマ憲法国民投票を間近にして

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ゴールデンウィークに暗い話に触れたくはない。触れたくない気持ちはわかるのだけれど、それにしてもあまりに小規模な催しだった。5月2日に「ビルマ、パゴダの影で」を上映した渋谷のApple Linkは、確かに小さな小屋だったけれど、その小さな小さなスペースですら、空席が目立ったのである。

スイスのジャーナリスト、アイリーヌ・マーティがこの映画を撮影したのは2004年である。当時、この映画で取り上げたビルマ、タイの国境付近に追いつめられた少数民族の苦境に対して、世界は全くの冷淡だった。アイリーヌは、ビルマの観光映画を撮りたいと偽ってこの国に入り、幾重もの軍事政権に対する警戒心をくぐりぬけて、特にカレン、シャン、ロヒギンジャーを中心にした少数民族の受けている、ビルマ国軍による徹底した弾圧の実態を世界に伝える役割を果たした。

ビルマの反軍政勢力と言えば、アウンサンスーチーを精神的主柱とする国民民主連盟(National League for Democracy; NLD)をまず思い起こすが、この映画には、アウンサンスーチーも、NLDも全くと言っていいほど紹介されない。この映画での主役である、少数民族からすれば、NLDもまた、ビルマ族の反政府権力の一つにしかすぎないのである。彼らの直面している苦難は、その次元を異にする。軍政の目指すところは、ナチスの目指したユダヤ民族に対するところのふるまい、徹底した民族浄化にあるのであり、村々は何の合理的な理由もなく焼き払われ、ジャングルの奥に追われる。たどり着いた場所もまたいつかは焼き払われる。国境を越えてタイ側に逃げ込む少数民族の難民の数は100万とも言われているが、国際社会は今なお、彼らを救う「功利的な」理由を見い出せずにいる。

連休で賑わう渋谷の街角にあって、この彼方の少数民族の少女たちの涙、少年たちの涙、親を理由なく参殺されたビルマ国軍に対する徹底した復讐心の絶望感は、ひたすら空気中で孤立していた。

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手法として、疑問の点は多々ある。その陥りやすい報道の死角については、上智大学の根本敬教授により、解説のパンフレットに明らかである。それにも関らず、この映画の淡々とした、あまりに演出が施されていない素の映像に見るところは大きい。ビルマの抱える問題のただ事ならない複雑さ、入り組んだ問題の深さが伝わってくる。

映画の後にトークショーとして、強制送還の危機を幾度と乗り越えた、在日のビルマ人、テーテーイスェさんの話があった。テーテーイスェさんは流暢な日本語を操り、ビルマの少数民族の苦境をあらためて訴え、日本人に対しての支援を呼びかけた。

【テーテーイスェさん プロフィール】
1979年ヤンゴン生まれ。幼少期をビルマで過ごした後、1991年に祖国を出国し、タイ
を経由して家族で日本に移り住む。オーバーステイによる強制送還の危機を乗り越
え、二十歳の時にようやく難民申請が受諾され、その過程は幾度もマスコミに取り上
げられた。現在「ビルマに自由と融和と民主主義を」をモットーにウェブ上のコミュ
ニティー"Change Burma Community"を運営。

世界が国家単位である民族の苦境に手を伸ばすのは、残念ながら国家がその問題に関わることで何らかの外交的、経済的、政治的な利益が得られる場合に限られるのが実情である。それを超えて人道的に動くのは、言うのは簡単だが、とてつもなく難しい。世界の各所で人々は見捨てられ、世界の各所で今日も路傍で息絶えている。なぜなのか。

それを考えるとき、我々人間存在の根本にある無力感を思い知らされるし、賽の河原のように前途にあるとてつもない障害の深さに心は萎縮する。

テーテーイスェさんが幾度も、幾度も「出来るところからでいいですから、無理のない範囲からでいいですから」と呼びかけていたのが、つらく心に刺さる。

5月10日に承認を問う国民投票が行われるビルマ新憲法は、議会の1/4を軍関係者が占めることに合法的保証を与えるものであるが、これらの少数民族たちは、それらの点について何の説明も受けていない。のみならず、憲法草案は英語とビルマ語にしか翻訳されていないし、文案を印刷した冊子もほとんど用意されていないのである。

ビルマに対するODAもどうか止めてほしい、私たちにはまったく利益がないどころか、軍政支配を延命させるエネルギーにしかならない。テーテーイスェさんは振り絞るようにして訴えていた。

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