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March 04, 2016

永遠に失われた国立競技場のこと

久しぶりにジムへ行って帰りに着替えている時、ふと「そう言えば最近競技場に行っていないな」と思ってから、「そうか。もう無いんだ」と思ったら、例えようのない寂しい気持ちになった。澄んだ冬の夜のあの冷たく凛と張り詰めた空気の香りと一緒に走った人の息遣いやその背中を思い出した。

あの国立陸上競技場は消えてしまったのだった。永遠に。

もとより嘆く立場でもない。ただ、自分は何年かの間、仕事帰りに一般向けに開放されている競技場で何とも中途半端な距離を走る素人ランナーだった。いや、そう言うにも恥ずかしく。実にへなちょこな走りしかしていなかった。

へなちょこだからトラックを10周もすれば座り込んでしまい、走っているただごとならない人達、同じ空気を吸うのが申し訳ないような人達の、ひたひたと走る姿と音を感じる。同じ人間とは思えないんだ。あの走る姿の美しさと速さ。厳しさ。音。

こんなところにいてごめんなさいと思いながら、まだ来ぬ、共に走るはずだった人のことを気にしながら帰る。

雨の夜でも国立競技場には走る場所があった。観客席の最上階の裏には、屋根のある室内のトラックがあった。寒すぎる時、雨の降る時。そこがトラックになった。

自分は前回の東京オリンピックをかろうじて覚えている。あの時。この国の熱狂のまん中にこの競技場はいた。あの燃え盛る聖火が燃えていたのは、あの中央のあの台の上なのだ。真っ赤な日の丸。燃え盛る聖火。

我に帰ると年老いた競技場があった。いま目の前にあるしんとした、凛としたこの場所が、あの子供の時の熱狂の場所と同じだとはとても信じられなかった。

あなたはどうだったろうか。何を考えてそこで走っていただろうか。それはきっともう僕は永遠に知ることはできないし、確認もできないだろう。あなたはもうそこにいないし、国立競技場はもうないのだから。

永遠になくなったもののことは、それから何年も何十年もしないと誰にもわからない。人と人の関係も。

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