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September 30, 2016

拡散などという薄い言葉ではなく

優れた文章を読むといつも思うことがある。それはつまり、僕がそれを読んで何を感じたのかなんて、二の次だということだ。自分の感想がどうであるかなんてことよりも、1人でも多くの人に読んでもらえればそれでいい。自分の感想なんてそれに比べれば大した話ではないと。こういう時SNSがあって良かったと思う。拡散などという薄い言葉ではない何かがそこにあるような気がしている。



RT @miura_hideyuki
朝日新聞アフリカ特派員

①極めて個人的なことを少し書く。東北のブロック紙・河北新報の伝説のカメラマン・渡辺龍が今日死んだ。享年43歳。大腸ガンだった。震災発生時、宮城県南三陸町で押し寄せてくる大津波に向かってシャッターを切り続けた、伝説のカメラマンだった

②当時、彼は南三陸支局の記者だった。あるいは妻子がいなければ、彼は津波で死んでいた。震災当日、町の職員と共に町議会の議事堂にいた。職員の多くはその後、防災対策庁舎(今、骨組みで残っているあの建物だ)の屋上に避難し、高さ13メートルを超える津波にのみ込まれて亡くなった

③あの日、龍の妻は偶然仙台に出掛けていた。彼は代わりに息子を迎えに行こうと会議場を抜け出して幼稚園に向かい、助かった。それがなければ彼は間違いなく、あの骨組みの建物の屋上にいた、そういう記者だった

④もしあなたの人生で最大の出来事は何ですか、と聞かれれば、私は迷わず「東日本大震災です」と答える。海外の現場で幾度も遺体や惨状を見たが、あの日沿岸部で見た光景の衝撃を私は今も忘れることができない。私の足元で、子どもが自転車にのったまま、泥に埋まっていた

⑤私は破壊され、混濁し、結局何も書けなかった。だから翌月、志願して南三陸町に駐在記者として赴任した。混乱の中で役所取材のすべてを放棄し、1年間、被災者と呼ばれた普通の人々の暮らしを追い続けた。一人称で、深く、長く、「誠実さ」を掲げて。そしてそこにはいつも龍がいた

⑥鈍くさい記者だった。質問もせず、ただずっと側にいて、最後に数枚写真を撮った。ただただ被災者と一緒に泣いていた。だから愛された。彼には人を惹き付ける、弱くて静かな「優しさ」があった

⑦僕らは「ライバル」であり「家族」でもあった。がれきで覆われた町を駆け回り、秋以降はできたばかりの仮設住宅で鍋を囲んだ。震災報道とかジャーナリズムとか、そんなアホ臭い話はしなかった。「○○さんの奥さんの遺体、やっと見つかったみたいだ」。僕らの周囲には生と死しかなかった

⑧かなり傲慢なことを言えば、私と龍ほど被災地に溶けこんで日々を見つめた記者はほかにいなかったと思う。書籍『南三陸日記』を読んで欲しい。本が出たとき、龍は「いい本だ。これは俺たちの記録だ」と言ってくれた。嬉しくて涙が出たよ

⑨だから毎年3月はどこにいても南三陸に帰った。昨年3月には龍はもう末期で、仙台で入院中だった。最後だと思ったんだろう。だからわざわざ南三陸に会いに来てくれた。「まだ生きてるな」と私が言うと、「そっちこそ。三浦より先には死なないよ」と冗談を言って、無理に笑った

⑩今年3月は記者仲間みんなで温泉に行った。何枚も写真を撮った。私は言った。「また2人で震災報道やろう。つまらない、作ったような『作文』じゃなくて、ここで暮らす人が『いいな』と思ってくれるような、そんな記事を2人で書こう」。龍は言った。「三浦は戻ってくるな、外で頑張れ」


⑪実を明かすと、私は11年9月と12年3月に2度、彼に「朝日新聞で一緒に働かないか」と転職を持ちかけている。当時、私は災害報道に人生を捧げたいと考えていて、津波を目撃し、その後も人々と共に泣き暮らした記者やカメラマンが絶対に必要だと信じ込んでいた

⑫龍は数日留保した上で「やっぱり河北でがんばるよ」と笑いながら言った。「それが津波を撮った人間のつとめだ」。奥さんも笑ってた。「あまり主人を惑わせないでくださいね」。龍は12年3月に言った。「ありがとう。三浦さんの誘いを一生胸にここで頑張ってみるよ」

⑬河北新報のみなさん。どうか良い紙面を作ってください。私はあなたたちが作っている紙面が好きです。記事や紙面は武骨だけれど、人間の匂いがする、伝えていくべき喜怒哀楽がある。龍のためにも。あの不条理にのみ込まれ、未だ立ち上がれない、彼が愛した人たちのためにも(終)

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