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January 20, 2017

与那覇大智展「影を放さない」展評

(1/20付沖縄タイムス)




 初めて与那覇大智氏の作品に触れてから10年近くの時が経過したことに気づく。今となっては最初の邂逅の時期にいまだ東日本大震災も起きていなかったこ とが、何やら不思議である。

 それほどに、自分はこの国に何やら揺れごとがあるたびに、静謐な空間に展示された与那覇氏の作品を思い、その前で与那覇氏と交わした会話について思い出してきた。そこで沖縄の運命と出会い、氏の画歴を培ったフィラデルフィアの街を脳裏で辿り、そして深い闇と光に包まれた世界と、与那覇氏と自分の住むこの世界との抗いについて思いを巡らしてきたと思う。

 この国の進むあり方に、与那覇氏は表現者として常に敏感であり続けている。自分が渾身の作品を前に佇み、取るに足らない問いを投げかけると、与那覇氏はそれに答えながらも、より深い場所、自らの魂の中で起きている出来事を返すというダイアログが続いてきた。その対話が自分の中で重要な位置を占めてきたことは間違いない。
 それは決して解のない謎の周りを共に巡るための無比の時間であり、世界の理不尽に対峙する一人の表現者の、言葉にならないイメージに心が触れる時間でもある。そしてもちろん自分自身の魂とも対峙する。否。対峙することを迫られる。

 「影を放さない」と題された今回の展示で中心を占めるのは、光と色彩に囲まれながらも、深い影を落としている椅子を中心に描いた「HOME―椅子」である。
 展示には言葉が添えられている。

 「『光』に照らされた椅子のそばにいる闇、それが『影』です。『影』は椅子が『光』に照らされる限り常に、椅子に寄り添っています。(略)椅子が『影』の主であることを自覚し、その影を放さないこと。それは、椅子が椅子であり続けるために大切なことだと思います。椅子は僕です。そしてあなたです。」

 画面に描かれためくるめく光芒と色彩に包まれながら、深い影を落とす椅子に心を座らせることが、この展示に足を運ぶ人に課せられる魂の試みなのかもしれない。その椅子に座る時にあなたにはどんな光が、そして闇が感じられるのか。闇の存在を忘れていないか。絵は問いかけてくる。
 思えば自分はこうした虚空の椅子に座るために、この場に何度も足を運んでいるのかもしれない。光と闇に包まれた椅子はまた「世界にポジションを取れ」と発する表現者の無言の挑発ではないのか。
 フェンスに隔てられた先に無数の光が煌めく「HOME―裏庭の宴」の前に立つと、画面の四隅まで張り巡らされたフェンスが否応なく心に挑んでくる。このフェンスはあなたと誰を隔てているのか。あなたはこのフェンスを越えることができるのか。いや、そこには本当にフェンスがあるのか。

 絵画という表現を評しようと言葉を撒き散らす己の無力に打ちのめされながらも、自分はこれからも氏の作品が展示される場所に通うだろう。たとえそこに画家の用意した椅子が置かれているとは限らなくても。その時は自分の椅子を置くことにしよう。









…………………………………
 与那覇大智展「影を放さない」は東京・Oギャラリー(中央区銀座1の4の9の3階)で22日まで。問い合わせは同ギャラリー、電話03(3567)7772。

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