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December 08, 2018

「中国人を逃がすな」

日本の農村の一部では、中国人の技能実習生の労働力がなければ、収穫作業もままならなくなっている。そのことを自分は、農家に嫁いだ親戚の者から聞いた。それは明らかに技能実習生なのだが、その地域ではただの労働力としての「中国人」である。収穫の季節には多くの中国人実習生が大量に地域にやってくる。

「中国人が逃げないようにするのが大変なの」

と彼女は当然の悩みのように言っていた。それがその辺りの地域での共通の悩みなのだそうだ。それほど彼らはよく逃げてしまう。

彼らを仕切っているのは同じ中国人の声が大きい女性であり、各農家に人を割り当てる。農家は「クライアント」だから腰が低いが、同じ同胞の実習生には極めて高圧的に当たるのだそうだ。

親族の嫁ぎ先には2人の中国人実習生が来ていたが、「逃げられたら大変だ」とそればかり口にしている彼女にとって、実習生は単なる労働力であり「中国人」でしかない。2人は畑から歩いて1時間ほどかかるところに貧弱なアパートの一室をあてがわれていたが、自転車も買えないため朝早く起きて徒歩で畑に通ってくるのだという話を聞いた。
雨の日は基本的に作業はないが、途中でやむ時もあるので、そんな日でもそれこそびしょ濡れになって朝早く歩いてやってくるのだそうだ。

それでも終始、彼女は彼らの人としての苦悩を想像するよりも、そうした待遇が原因で「逃げられたら大変だ」とそればかり口にするのだ。彼女の夫も「甘やかしたらあいつらはどこまでもサボるから厳しくしなければならないけど、逃げられたら困るし」と口にしているという。

その話の最初から最後まで、「実習生」という言葉は使わなかったので、この話を聞いた時僕も彼女の語り口を不快に思いながらも、実習生ではなく「中国人」と理解し、ああ地方の農家の労働力とはそういうものなのかと思ってしまっていた。

けれど。

それは「すぐ逃げる中国人」ではなく、外国人実習生のことだったのだ。それ以外に現在日本の農家が外国人労働力を組織的に利用する道は僕の知る限りないからだ。ピンときていなかった自分の限界である。

国会で野党が調べたところではこの3年間で69名の外国人実習生が亡くなっているそうだ。その話を聞いた時、僕は大雨の中でも畑まで1時間も歩いてびしょ濡れになって通うあの2人の中国人の若者の話。そして「逃さないようにしないと」と当然のことのように笑いながら語っていた、おそらく日本の田舎のどこにでもいるであろう彼女のことを思い出した。

病は、こんな話をせせら笑って聞く自民党だけではない。我らの隅々に染み込んでいる。


●参考

農業分野における外国人の受入れについて(農林水産省)

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