権威と常識の顔をかぶったオトナの、底の知れない非常識の不気味--堤義明と渡辺恒雄
いわゆる誰でも認める「オトナ」というものがある。
「オトナ」は私たちに常識を説き、規律への忠誠を求める。
新しき知恵を拒み、年功への敬意と穏便な継承を強いる。
そこでは年長と経験はそのまま、尊敬に値する価値とされ、若さは
そのまま無計画と不見識、未熟の象徴と、当然のように軽く遇され
揶揄される。
私たちは世に出てから、この「オトナ」の仕打ちに幾度も
打たれ、幾度もその志を曲げさせられ、気がつけばいつの間にか
不見識な若者を糾弾する側=オトナになっていく。
あなたも覚えがあるだろう。
常識というものがもしも社会の知恵を先代より引継ぎ、後世に伝えて
いく限りのない試みの連鎖だとするならば、この典型的な「オトナ」だ
と思われた企業とその経営者の「非常識」を私たちはどのように
とらえればいいのだろうか。
コクドの堤義明氏。
オトナの顔をかぶった彼の経営の基盤には底の知れない非常識が
泥土のように積み重なっていた。
(1)税金を払わない
毎年の経常利益を一定して赤字スレスレの微妙な黒字にしている。
さらにグループ企業間で株式の持ち合いを網の目のようにはりめぐらし、
グループ内で受取配当金の控除を巧みに調整している
また相続税についても非上場会社のコクドを使って自らが支配する数多
くの企業の法人税を払わないようにするばかりか、巧みに相続税対策を
駆使し、「自分の資産を遺産として残し、それが目減りする事なく、代
々受け継がれるようにする事」を実現させている。
(2)上場会社であるにも関わらず、西武鉄道の大半の株式を流通させず
実質「非上場」状態とする。
有価証券報告書の株主記載を偽り、実質の株主構成ではグループ10社計の
持ち株比率は88.57%にもなるにも関わらず、それを偽り、市場に適正な
株式が流通しているかのように見せかけ、結果として自身の絶対的支配権を
確立し、西武鉄道の株価操作をも行っていた。
(3)取締役会を開かない
少なくとも今春まで約7年間にわたり、取締役会を開いていなかった。
取締役会は最低でも3カ月に1回の開催が商法で義務づけられている。西武
鉄道グループの重要な経営判断はすべて、創業家の堤義明氏(西武鉄道、コ
クドの前会長)が決定していたことを示すもので、ずさんな企業運営が続い
ていた実態が改めて浮き彫りになった。
プロ野球への新規参入問題の時も、あたかも自身が規律であり、この世の
権威であるかのように振舞った、堤義明氏と渡辺恒雄氏。
渡辺恒雄氏は自らの関与で、日本テレビ株式の保有実態について著しい虚偽報告
をしたことに関して、上場廃止基準に抵触する可能性が指摘される。
いずれもが、およそこの社会を成り立たせているルールの基本を無視し、
底の知れない非常識を延々と幾年にもわたって続けてきた事実は私たちのオトナ
の「常識」を根本から揺さぶり、警鐘を鳴らすものだ。
僕がこの年になってようやく自分の中で判断基準のバイブルとして認めている
ある規範がある。それは、社会に出て最初におかしいと自分が思ったことは、
幾年たっても、結局おかしいということだ。
若年の頃は、ただそれを生理的におかしいと思うだけで、そのおかしさについて
実証ができないし論議できない。
社会での経験が足りないし、この種の「オトナ」ピープルと議論を交わす言語の
共通体系を持たないからだ。
だが、若年の時の生理的・感覚的違和感は、実は重要で的確な場合が多い。
「偉そうなオヤジ」=強大なオトナとしてこの世に君臨するこれらの非常識者は、
自分のデタラメを隠蔽する術にも長けており、青二才の疑念を机上の空論として退ける。
だがそれは、小手先のテクニックにしか過ぎない。人を威圧する傲慢な風体や
尊大な発言も、そのための演出道具だと思えば理解ができる。
私たちに必要とされるのは、権威と常識の皮をかぶり、人を大声で威圧し
支配の小手先のテクニックにばかり長けているこれらのとんでもない「非常識者」
にさっさと退場願うことだ。
そのために必要なものが。若き日の感性や直感と、熟した者の経験と知恵ならば
喜んで両者、手を差し伸べあうべきだろう。
見せ掛けに騙されてはいけない。老いも若きも、である。
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※参考
・「世界一の大富豪・堤義明『コクド』の研究--なぜ『コクド』は税金を
払わないのか」(『文藝春秋』1994年9月号。執筆者は立石泰則氏)
・毎日新聞 2004年12月18日号
・「ミカドの肖像」(猪瀬直樹氏)
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僕のくだらないblogにトラバありがとうございます。非常に面白く読ませて頂きました。ここまでストレートに書いてあると気持ち良いですね(笑)勉強も兼ねてこれからも閲覧させて頂きますね。
Posted by: のっち | December 19, 2004 12:06 PM
とってもストレートな意見でオトナ(世代)に属する爺としても耳が痛いです。でもBigBanさんが熟年者全体を非難しているのではないとわかりホッとしました。それと爺はこの年になって、あのころは見えてなかったんだなぁと思うこともありますよ。まぁそんなこともあるということで。
BigBanさんのおっしゃるとおり堤さん、西武グループのありようはおかしいですよね。堤さんは記者会見一度開いただけで、いまだにちゃんとした謝罪・説明をしようとしてしないし。
ところで月曜組曲楽しみです。どんなエンディングになるんでしょう。それと今年はクリスマスの約束みたいな特別番組あるんでしょうか?
Posted by: ちょび爺 | December 19, 2004 01:21 PM
http://atcy.boo.jp/blog/archives/2004/12/post_1.html#comment-49
他のブログに書いたコメントで申し訳ないですけど、良かったらみてください。
Posted by: winter-cosmos | December 19, 2004 02:43 PM
トラバありがとうございます。
私も,普通に考えておかしいという感覚は,妥当な事が多いと思います。
また,拝見させていただきますね!!
Posted by: Y | December 19, 2004 11:14 PM
>ちょび爺さん
いつもありがとうございます。
私も立派な(?)オトナ世代です。自戒を込めての術懐だと思ってください。あの頃、見えていなかったものも沢山あります。ですが、一番見えていたものも、やはり沢山あるのですよね。
ところで、月曜組曲は昨夜が最終回でしたが、「クリスマスの約束」は今年もあるようですね。月曜組曲のメイキングも放映するとか。
>Yさん
弁護士さんでいらっしゃるのですね。読んでいただいてありがとうございます。
Posted by: BigBan | December 21, 2004 06:18 PM
>のっちさん
つまらないなんてとんでもない。ネットネタなど面白く読ませていただいていますよ。今後ともよろしくです。
Posted by: BigBan | December 21, 2004 06:23 PM
トラバありがとうございました。最近、さぼっていたので気がつきませんでした。
「大人の顔にはその人の歴史が刻まれている」という言葉を若い時に聞き、渋い顔の大人にならねばと思っています。が、未だに修行不足のままです。
渡辺氏の場合もそうですが、歴代の政治家もあまりさわやかな顔というイメージがないのは思いこみのせいなのでしょうか?権謀術策のなせる技?
渡辺氏の振る舞いを見ていると氏が影響力を持っている報道機関である読売TV、読売新聞に「公正な報道」「国民の視点」が根付いているとはとても考えられないような気がします。
現在の日本は、将来への道筋を立てる一番重要なポイントなので先があまり長くない方には早期の退場を希望しています。
Posted by: unokun | December 28, 2004 02:06 AM
堤さんこのばにおよんで苦しいいいわけつづけてますね。
ナベツネもやめればすむって問題ではないでしょう。
不透明な資産形成について説明とか納税とかきちん
とすべきでしょう。相続のときにこまりますよね。
Posted by: ダックスふんと | January 10, 2005 03:45 PM
コメントありがとうございます。
結末をしっかりと確認する必要がありますね。中途でうやむやにされることがないように。
Posted by: BigBan(>ダックスふんとさん) | January 11, 2005 01:37 AM