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January 26, 2006

心の中のライブドアショック----私たちは暴力装置の中で生きている

ライブドア事件が発生して以来、何だか仕事が手につかない。ついニュースサイトを追ってしまったり、株など持ってもいないのにライブドアグループの株価をチェックしてしまったりする。「ありし日の」得意のホリエモン(今このサイトでは初めてこう表記する)を思い、今の落日を思い、世界に満ちている彼への悪意を思い、無意味に気持ちが沈む。

一貫して僕は彼を批判してきたが、彼をこの世から抹殺したいとか、引きずり落としてやろうとか思ったことは一度もなかった。どこかでやはりこの稀代の「大風呂敷男」に注目し、どこかは評価してきたのだろう。だからこそしつこく、その危うさにこだわり続けた。

それが、昨日まで彼をもてはやしていた世間が、くるりと手のひらを返す様子を見ると、やはり心が暗くなるし、もしも自分がそういう立場になったら(いやあれほどの大転落はしたくてもできんけどさ)きっとそうした冷たい世間の悪意に晒されるのかと思い、彼の落胆いかばかりかと思い、やはりここは心のOSを根本から組み替えて再起してもらいたいと思う。いつもの悪い癖で彼の何かが自分に憑依してしまっているのかもしれない。僕にはそういうところがあるのだ。

そんな感傷を言っている暇があったら、見切り発車であれほどの規模の強制捜査に踏み切った検察の「暴力」についても言及していかなければならないと思っている。はっきり言って今回の強制捜査は別件捜査もいいところであり、あそこまでパソコンや重要書類を突然持ち去られて、徹底的に調べられたら、子会社の預金の付け替えや投資組合経由の不明朗な投資など、他の企業でもうようよ出てくる話だと思う。目的が手段に先行し、手段の合理性を十分検証しないまま先へ行こうとしているのは、どこかイラクに先制攻撃した米国の理屈さえだぶる。もちろん、イラク戦争のように何の証拠も出てこなかったということはないようであるが。

決算期間際になると、何とか売り上げを前倒しにして当期の決算を良く見せようとすることは、多くの非上場/上場企業でされていることは、企業に働くものなら皆知っている。民法上の任意組合を連結対象や開示対象にする義務が法的に明確にはないことも明らかなのにも関わらず、「実質支配」などという抽象的な言葉で強引にくるめられて物事がライブドア絶対有罪の方向で進められていく。

繰り返すが僕は堀江の哲学は浅くて卑しく愚かだったと思う。その評価には微動だにしない。あの彼に夢の代弁者を今も期待する若者がいるなら、目を覚ませと言い続けたい。だがそれとこれとは区別されなければならない。幸いネットに多くの英知が今回の事件について同じことを言及し始めているので、希望がある。ありはするが、この1週間繰り広げられた、国家権力による一企業へのすさまじいまでの「暴力」(と呼ぶ。敢えて)は、この光景はやはり僕の心を暗くさせる。

1人の人物への世間の評価が昨日までと天と地ほどに変わってしまった例として、オウムの麻原を思い出すのだが、あのときも長く重く苦しい気分がずっと続いていたと思う。多くの人が亡くなったオウム事件をそのまま今回になぞらえるのは適切ではないのだが、上九一色に向かうおびただしい数の警察官と機動隊のあの風景はどこか今回の六本木ヒルズの風景とやはり重なるところがある。

それは普段意識しない国のもう一つの姿。権力の暴力装置の姿である。仮に後日ライブドア側の言い分のいかばかりかが司法の場で通ったとしても、時間を逆行させることはもうできない。現代の暴力装置は時計の針を元に戻すことは決して許さないのである。そのことの恐ろしさを僕たちは自覚すべきだとと思う。

しかし今回の事件に際して「ライブドアニュース」の姿勢には敬服した。幼稚でつまらない記事ばかり連発して・・と平時には馬鹿にしていたが、未曾有の自分たちの危機に対して彼らのフェアな報道姿勢は、素晴らしかったと思う。現場の一人ひとりはどんなにつらい思いで、自分たちのボスのそして企業の不祥事と破綻を報じているだろうかと考えると胸が苦しくなる。

そうしたわずかなディテールに込められたかすかな希望が今の僕には救いである。

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Comments

普通に考えて、自社に対する悪口を積極的に取り入れることは、既存のテレビや新聞ではあり得ないでしょう。それがなぜ出来るのかといえば、彼らに報道人としてのモラルがあるということではなく、単に会社に対する帰属意識が希薄だからである、と私は思います。

「どんなにつらい思いで・・・・胸が苦しくなる」とBigBang氏は感傷的に書かれていますが、実のところ、そういう風に思っているスタッフはほとんどいないのでは無いかと私は思う。仮の話、ラ社が潰れてしまったとしても、ラ社のニュース速報の現場で1分間に3つの記事を拾っていたという技術があれば、その技術はヤフーでも勤まる。その程度のもんではないんでしょうかね。概ね大手IT系会社に勤めるの若年層の人々は、会社のことよりも自分の技術を磨くことを優先する傾向があるのではないかと思います。「チャンスがあればオレも成り上がるぜ」ってね。いや、これは別に悪いことではないですけどね。

ただ、彼らは他社の記事を機械的に切り抜いているだけで、自らの主張をしているわけではない。ある意味、世論にあわせてニュースを選択しているという一面もありますので注意されたほうがいいでしょう。例えば、ライブドアPJには堂々とラ社を擁護している人もいて、逆に彼らの意見がサイトのトップニュースに出てくることが無いことでも分かります。

ま、BigBangさんにおかれましては、もう少し世の中を深読みする努力をされたほうがいいのではないかと、恐れながら進言致します。

読んでいただいているようで光栄。鮫島流のアイロニカルな批評で恐縮。せっかくだから返信は別エントリーにしようかと思案中。ではでは。

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