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« 松永英明インタビュー(GripBlog)の勇断に敬意 | Main | GripBlogインタビューを読んで(2)----R30は何者なのか »

April 24, 2006

GripBlogインタビューを読んで----松永英明氏に誤解を謝罪する

長大なインタビューには、考えさせられるポイントが盛り沢山であるが、今回のインタビューで解明されなかったことを取り急ぎ箇条書にするとともに、インタビューを読んでの最初の感想を書く。

今回明らかにされなかったこと。

●民主党のブロガー懇談会出席をFlashに報道されたまさにその日に、自民党のブロガー懇談会に出席するという理解しがたい行動に出たことの理由とその経緯。

●泉さんの報道機関設立企画構築を松永氏が「手伝った」という、その具体的な作業内容。

●未だに実在さえ疑われているume氏「失職」への、多大なる責任への松永氏の考え方。そして長年のパートナーを巻き込んだ多大なる災難の「元凶」であるはずの松永氏に向かって、それを一言も追求しない泉さんの「平静」の理由。

●「地下鉄でサリンを撒いたこと」以外のオウムの過去の所業への考え方。つまり坂本弁護士一家殺人事件、あるいは仮谷清志さん拉致殺人事件、松本サリン事件などへの関与に関する考え方。

●明確にオウムを「脱する意志」(あるいは乗り越える意志と言ってもいいのかもしれない)の存在。

それはそれとしてまず、松永さんに私は心よりお詫びする。私は、松永さんを誤解していた。私は、松永さんは心から「オウムの世界」から脱却することを必死に望んでいるのであり、それをとりまく社会の偏見や無理解と闘おうとしているのだと思っていた。であれば、そのために彼ができることは全てすべきだと考え、居丈高な調子で「脱会届の提出」を説いた。今この長いインタビューを読んで、私は自分が根本から間違っていたと認めざるを得ない。実はその思いは少し前からあった。それを初めて深く考えさせられたのは、数日前の極東ブログのこのエントリーである。 

本人はアレフは退会していると言いたいようではある。では、退会とは何かなのだが、アレフの規定では退会届けを出せばいいらしい。では、彼も退会届けを出せば「形」が付くじゃないかと私などは考える。が、彼は、そういうことは意味がないんだ、まるでわかってないと言いたいようでもあり、おそらく、それは彼にとっては重要な現状認識なのだろう。
 でも、それはたとえば私には伝わってこない。むしろ、「ほぉ、これが退会届の配達証明書の写真ですか、出したのですね」というのだとよくわかる。そして彼が内心実はアレフの信仰やその関連の活動をしていても、社会に見える形があれば、とりあえず私は勧進帳をするにやぶさかではない。
 という時、私はなぜその形に結局こだわっているのだろうか。自問するがいまひとつよくわからないのだ。(極東ブログ
  形と実態

この記事を読んだとき、私は心の中に「何か」が引っかかった。その引っかかりは何だったのか。わからなかったことが今回このインタビューではっきりわかった。それはつまり、こういうことだ。

松永英明氏は

●今でも、形も内実も、紛れもないオウム真理教徒であるということ。
●但し、サリン散布だけは明確に否定しており、上祐の権威志向にも反感を持っている、そして出家を貫くには俗っぽすぎた、1人の有能なオウム真理教の信者なのだということ。
●その思想的・信仰的立場を変える気持ちなど、今の本人には微塵もないのだということ

である。社会は彼にとって今なお「異界」なままなのであり、経済的必要を除いては、同化する意志はほとんどない。というよりも、もしも彼が信仰に忠実であろうとすれば、この社会は「同化すべき対象」ですらないのではないか。このような人物に向かって。「形式だけでもさっさと整えろ」と法的な脱会届を薦めた私はもはやピエロでしかない。psycho78に嘲笑されても仕方がないのである。なぜなら本人が否定しようとしている実態は上祐派の思想なのであり、「サリンを撒いたこと」なのであり、オウムの教義でも何でもないからである。オウムがもしも殺人さえ犯さなかったら、社会に対して敵意を持つその教団の姿勢も、信仰の自由という大儀の前に今でも敷衍されて昇華されていたであろうということである。思えば脱会届など出しようもないのだ。なぜなら原始仏教=オウム真理教への信仰は揺らいでいないのだから。

そんなこととは微塵も考えず(少なくとも初期は)私は本気で松永英明という希代のブロガーが、オウム真理教の呪縛から逃れ、この社会に帰化ようとして苦闘していると、一瞬でも信じたのである。

今となってはその不明を深く恥じるばかりである。

私は、幼く苦しい時代、救いを求めて多くの宗派の扉を叩いた。その当時もしもオウム真理教が存在していたら、一度は訪ねていても不思議はない。私は本来そういう人間である。だが、ついに宗教に救いを求めることはできなかった。私がこの遠い日の自分の記憶を思い出していたなら、信仰する者=松永氏に対してもう少しまともな対応ができたのではないかと思う。人は時間の流れの中でかつての姿も見失うことがある。自省している。

松永さんが、時折わが身の不運を嘆いて見せるのは、病気と、そして今回の騒ぎで今後訪れるかもしれない経済的な試練を心配しているだけなのであり、信仰の基本的なポジションはいささかも変える意志はない。今回のインタビューではそれがはっきり見て取れる。社会に同化しようと願っているわけでもないが、収入が途絶えることと自らの健康が損なわれることは、異常に恐れている。
被害者に対しては謝罪の気持ちは持てない。なぜなら「あの日」彼は秋葉原まで何も知らずに、頼まれてICレコーダを買いに行っただけだからであるから。彼がサリンを作ったわけでもないし、彼が蝙蝠傘でビニール袋を突いたわけでもない。彼が坂本弁護士一家を絞め殺したわけではない。なぜって彼は仏教に深い関心をもって求道しようとした1人の修行者でしかないのだから。

サリン事件の直接的被害者から、罰を受けることは止む無しとするが、直接的被害を受けていない人からなぜ非難されなければならないのかという彼の感覚からすれば、身内に誰も死者も怪我人もいない私が、なぜこの問題にこれほどこだわるのかは、決して理解することはできないであろう。なぜなら、松永氏にとって、家族も社会も同じく「否定されるべき」存在であり、社会的な視点からの「共感」や「責任」については、全く理解する能力を欠いているからである。

ちなみに松永氏の家族の不在は、それ=社会や家族への嫌悪を是とする感情を正当化する理由にはならない。

それを私が言う理由は明らかであろう。

信仰の自由は果たして無限の自由なのか。他者への贖罪とは何なのか。
その重いテーマに対して背中を向けることは断じて許されないという思いを一層強くした。
オウム真理教の問題とは、サリンを撒いたことだけなのか。果たしてそれ以外にあるのか。

いずれにしても、ようやくこの問題のスタート地点に立てたという意味で、「長い空白の期間」が終わったと私は判断する。

明記する。BigBangとしてこの問題を「解決済」と判断することは当分ない。それを知らせてくれた3人のインタビュアーに心より感謝を捧げる。

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Comments

しかし松永のズレようはすごいですね。
松永は教義を捨てる気などかけらもない、それどころか、これだけの事件を起こしながら、教義を疑ったことすら、考えたことすらないということなのですから。
他人の命を勝手に奪い取るのも「信教の自由」、自分の病気や経済基盤といった生存を危うくするのは「信教の自由に反する」から社会のほうが悪い、と本気で考える人は初めて見ました。

「信教の自由」を自分の都合のいいように振り回すのは勝手ですが、社会と折り合いをつける気がないのなら、社会に頼らない覚悟を持て、入院どころか医者にもかかれずにサリンで死んだ人のことを考えろ、と言っては松永のファンから非難されるのでしょうか?
「想像力の欠如」・・・と簡単に済ませられるのかどうかはわかりませんが、松永も擁護する人間も、自分か自分の身内が殺されるまで、自分の言っていることの矛盾がわからないのでしょうか?
気持ちの悪い社会の奇形化を感じます。もちろんそんな人たちばかりではないでしょうが・・・。

>民主党のブロガー懇談会出席をFlashに報道されたまさにその日に、自民党のブロガー懇談会に出席するという理解しがたい行動に出たことの理由とその経緯。

いずれかの政党の支持者であるかどうかに関わらず,両方に出て比較したい,と思うのは私にとって,普通に理解できることです.それを"理解しがたい行動"と思うことのほうが私には理解しがたいです.

>こ~りんさん
週刊誌に出たことでその行動が社会的に問題視されることを認識しておきながらも
自民党の懇談会に出席した行動が理解しがたいと言われてるのだと思います。

ちょっと今の心境をぐだぐだ、はてなの方に書きました。こーりんさんのコメントのことも。

でもほんとにそっちでは「ぐだぐだ」です。

黒崎@スポンサーロゴ外れる、のツー

ま、そういった按配で、湯川氏の表ブログ「湯川鶴章のIT潮流」から、スポンサーであった富士通のロゴが一切なくなっています。
これはどういうことかというと、そういうことを意味しています。
社会の掟として、当然の流れの一部であろうと評価する声もあるようです。

黒崎さん、コメントだぶりの件対応しました。湯川さんのところ見てきて、ロゴを確認しましたが、記事のほうは

エラー
2006年03月28日

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コメント

新しいURLは、
ObjectNotFoundばかりです。
from:久保 | 2006年04月28日 06:40

などと相変わらずよくわからない状態になっていました。

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