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October 29, 2007

雨と名画座と歌姫

風の強い日には傘を壊す。それならいっそささなければいいのに、人はそれでも傘をさし、強い風にあおられて、これも予想通りに傘を壊す。

飯田橋の名画座に行ったのは台風が近づく風の強い日だったのだけれど、学生時代に確か何度か来ているはずの、その外観のたたずまいは、すっかり記憶の中で薄れていた。ただ、こんなに入口は狭かっただろうかと思っただけだ。どんな映画をここで見たのか、それも忘れてしまった。実際飯田橋の界隈の変わり方といったらどうだろうか。表通りにあったもうひとつの名画座は、とうの昔になくなってしまった。
仕事できたはずなのに、そこの名画座の社長の話が多岐に渡り、いつか話は映画と戦後文化とかそういうところにまで広がっていき、次第に時間を忘れていった。

で、社長がふいにこの秋始まったドラマの題名を口にした。

「歌姫」----。

長瀬智也と相武紗季が出演するそのドラマは、昭和30年代の土佐清水を舞台にしている。記憶喪失になって流れ着いた長瀬智也演じる主人公は、土佐のオリオン座という高田純次が経営する古い映画館で面倒を見てもらい、映画技師として働いているが、とにかく破天荒にトラブルを起こし、土佐の街で暴れまくる。相武紗季演じる映画館の娘が、彼に思いを寄せると、そういうドラマだ。『花より男子』の脚本家として知られるサタケミキオの台本。

題名にそぐわず全編乱暴な土佐弁が飛び交い、元々が演劇の本のためか、出演者はいつも怒鳴りまくっていて、とにかく落ち着かない。タイトルもどこでどう効いてくるのか今のところ、さっぱりわからない。三丁目の夕日のような物語の展開を期待すると見事に裏切られる。そのためか、評判もあまりかんばしくないようだ。もっとも第三話で佐藤隆太の「クロワッサンの松」に異様な可笑しさが出てきていたので、ここのところだけは少しだけ期待している。

で、なぜ社長がこのドラマの話をしたかというと、劇中の「土佐のオリオン座」の映写室におかれている映写機は、この社長の名画座にあったものをテレビ局から請われて貸したと、そういう縁があったからだ。そうか、あの映写室かと、訪ねた日の前日に見た情景が浮かんだ。

年代物の高価な映写機とあって、最初は社長は固辞したそうだが、スタッフの「熱意」に押されて貸した。素人に乱暴に扱われては困るので、映写技師も毎回収録に立ち合わせ、毎回収録時に組み立て、その後分解して箱にしまう。その繰り返しは、毎回数時間に及び、簡単なことではないとか。

「それなのにあれだよ」

と社長が言う。やはりドラマの出来には相当不満な様子だった。昭和30年代のレトロな映画館の雰囲気をどこまで再現してくれるか、それに期待していたらしい。映画館の独特の雰囲気と空間、そこにやってくるお客と映写技師との触れ合い。うむ、「ニューシネマパラダイスと三丁目の夕日を足したような?」と口を挟むと、そうそうとうなずく。

「いや、夕べあたりからいい味も出てきていますよ」

などとわけのわからぬフォローをするが、クロワッサンの松の話はしなかった。もう観てないよ俺は。と社長が笑う。「名画座」という言葉の意味がわかる世代も、どんどん少なくなっていくのだろうな、と思う。

ほかにもここに書きたいような話をたくさんしたのだが、ようやく彼にお暇を告げて外に出る。飯田橋の街に雨風が一層激しくなっていた。

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Comments

もしかして、年間フリーパスがあるところか?
そこなら、台風が近づいていたとき、そこから、坂を登っていたな。ニアミスか?

もっとなくなっていく映画館の最後の砦が、
その名画座のワキにある。
アラーキーもうん十年前に撮影している。
そこへ行った方が人生経験になる。
今はなくなってしまった、神田ガード下には、
映画にではなく客に感動した。
下手なシネコンより客が熱かった!

映画を映画館で見ないというのは、
CD、さらにいえば、ネットでダウンロードしてしか、
音楽を知らない人と同じだな。

つまり、一人で楽しんで、一人で泣いて、
一人で愛して、一人で死んで、
こんな人生でいいのかなぁ?

それなら、誰かを苦しめた方がまだましなのかも。

どうも。すっかり遅レスになってしまいました。そうそう、そこです。で、もう一個のところも記憶がかすかに・・(以下略) 人生経験は両方の劇場に行ってこそ出来上がりますよ。
社長によれば、そのうちシネコンで古い映画がかかる時代が来る、そのとき名画座はいかにあるべきかというあたり、なかなか厳しいようですが、あそこの社長は資産家なのでまだいいんですが。

僕は割り切っていて、どんなメディアの時代になっても人生はちゃんとあると思ってますよ。

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