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May 25, 2008

「優秀な」日本と「憐むべき」警戒心

何とか猛々しいではないけれど、国連事務総長の必死の説得に高慢に応じる形で、ビルマ軍政は海外からの人的支援を受け入れることをやっと承諾した。決断には、内政への政治的介入を行わないこととといった条件がつけられており、皮肉にもビルマのサイクロン被害者を救おうという国際社会の善意が、政治的に逆手に取られた形になった。

間もなくビルマでは、アウン・サン・スーチー氏の自宅軟禁がさらに延長されるかどうかという重要な期限を迎える。軍政がこれを延長するのはほぼ確実とみられており、これに対して抗議の声を上げることが、少なくとも国連レベルでは困難になった。懸念されていたように、政治的取引として外国からの援助さえも、自国民の生命と一緒に人質に取られたとしか言いようがない。ここまでして権力にしがみつこうとする、意志とは一体何か。その負のエネルギーには呆れるとともに、空恐ろしいものさえ感じる。

それはともかく、今朝の朝日新聞を見ていたら、これを受けて早くも日本の医療チームの先遣隊が、今日ビルマに出発するらしい。近隣以外の諸外国では異例の早さのようで、このたりは正直ほーと思う。このあたりは比較の問題なのだが、確かに日本は海外への災害支援対応については、卓越したスピードを持っているように思う。常日頃、自分の国に関して褒めた試しはないのだが、そうした点はやはり、相対的に優秀なのだろうと思うし、日本人にはそれを可能にする地力も、思いもあるのだろうと思う。

四川の大地震で日本の災害救助隊は敏速に活動を行うことがかなわず、被害者の救助はできなかったが、遺体に対して黙祷を捧げる日本隊の姿は中国でも大きく報道され、好意的な反応が多く見られたというが、さて、はたして中国の多くの人たちは日本人がこうした活動に関して、特に現場は大変に誠実に、利益を度外視して動く民族であるということを知らなかっただろうか。きっと知らなかったのだろうな。

直接に日本人とのつきあいのある少数の中国人は除いて、あるいは多くの人にとって、日本人は中国を侵した野蛮な民族であり、上海で大虐殺を図った民族であり、成り上がりにあぐらをかいて、アメリカにすり寄るアジアのならず者というステレオタイプに見えているのかもしれない。(もちろんこの誤解は双方にありうるのだが。)

だが、我々は知っている。多くの日本人、特に医療災害の現場に働く人たちのなんと誠実で勤勉であることかを。いったん事が起きた時に、被害者が日本人であるからとか、中国人であるとかいう理由で彼らが区別などするわけもない。不眠不休であらゆる知恵を出そうとする。簡単にはあきらめない。それが日本人であるし、その勤勉さには、我々はもっと自信を持っていくべきなのだろう。もちろんこれは、日本だけではない。民間レベルではどこの国の人々であっても資質の方向こそ違え、独特の長を持っていると信じているのだが。

少なくともビルマの軍政が気にしているように、「援助に名を借りた不当な政治的介入」など、少なくとも日本の災害援助・医療関係者が行うべくもないしまた、言葉の誤解を恐れずに言えば、政府にもその「器量」もない。しかし百戦錬磨の外交の場となってくると話は変わってくるだろう。

欧米のNPOやNGOの中には、海外援助を表看板にしながら、国家的・政治的「意志」と裏で結びついている団体も少なくないと聞く。ビルマ軍政が外国の人的な「侵攻」に極端にも思える警戒心を持つのも、そうしたところに由来しているのかもしれない。

それを口実に彼らの「憐むべき警戒心」を正当化する気はさらさらないが。

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