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March 03, 2019

「グリーンブック」-地獄のような60年代の南部をエンターテイメントにしている



よくこんな難しいテーマを映画にできたなと思う。白人と黒人のロードムービーということでお決まりのラインかなと思ったけれど、細かなひねりが各所に効いている。その上ここでこれまで被せてくるのかとか。何よりこんな見ようによっては救いのないシリアスなテーマをエンターテインメントにして楽しさまで演出しているのが凄い。

人は必ず誰かに救われるものであり、一方的な依存関係はないんだというところの表現もいいです。ヒリヒリするようなドクの孤独とか。

しかし60年代の南部の人種差別の凄まじさに背筋が凍る。我らには人種問題に時として敏感すぎるのではないかと思われるハリウッドだけれど、むべなるかな。ここをくぐり抜けてきて彼らは今の場所に立っている。

イタリア系運転手トニーの奥さんがとてもいい。

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February 11, 2019

Youtubeプレミアム「ORIGIN」が凄い——こんなクリエイターたちの時代に添いたかった。

YoutubeプレミアムのSFホラー「ORIGIN」
最初はエイリアンとブレードランナー足して2で割る的な程度の印象だったのだけれど、ストーリーもしっかりしていて人間描写も丁寧でかなり深い。何より同時代進行ののサイバークリエイターがどんな未来を考えているかがリアルにわかる。VRやAIの絡ませ方も上手いなあ。いいなあと感心。

こんなものが作られる時代のクリエイターにもっと添いたかった。



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January 22, 2019

1人ひとりの顔-「ヒューマン・フロー 大地漂流」



アイウェイウェイの 「ヒューマン・フロー 大地漂流」 を観てきた。

ボートから降りてくる一人ひとりの、疲弊し果てた難民の顔。一人ひとりの顔をこんなにじっと見たことはなかった。ポタポタと落ちる水滴。めくれ上がった子供の背中。尊厳という言葉。

一度難民になると世界平均でそこを脱するには26年の年月がかかるという。迫害と弾圧が荒れ狂う中で、世界の各所で必死に彼らを助けている人々もいる。もしも自分がそこにいて、一度彼らの世界を覗き込んだらこちらの世界には二度と戻ってこられない気がする。

第二次世界大戦以来の大規模民族移動。人間の生物としての大転換期であり大移動の時期なのかもしれない。その中で倒れる大量の人たち。

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December 28, 2018

家へ帰ろう-現在進行形の責任について




たまたま時間があったので銀座で観たけれどめちゃくちゃいい映画でした。ナチス迫害の時代を生き延びたユダヤ人の老人が、助けてくれた恩人の友人をアルゼンチンからポーランドまで訪ねるロードムービー。道中出会う人々との会話から70年前の出来事が次第に明らかになってくる。

ネタバレできないからこういうの語れなくて困るのだけど、中でもドイツ人の若い女性との出会いの物語が涙腺崩壊でした。この世には想像を絶する地獄というのがかつてあった。ユダヤの受難と安易に比較してはいけないかもしれないけれど、自分も含め皆が時代を背負っている。

沖縄で起きていることへの現在進行形の責任とか考えました。お奨め。お正月に是非。

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November 10, 2018

俺が何者なのかは俺が決める




I decide who I am.
俺が何者なのかは俺が決める。
-フレディマーキュリー

公開2日目。IMAXで見て良かった。

自分達は多くの人の死をルーズにスルーし続けて来てここに立っているけれど、この人のこともその例外ではなかったと思う。ゲイもエイズもゾロアスター教も、まだ魔物の屋敷のように恐ろしかった時代のスターだ。自分は、何を彼が歌っているのかも、ルーズに聞き流してきたのだとわかった。そんなことばかりまだまだ多く、亡くなってもまだ追いかけないと人のメッセージはわからない。

この映画を娘の世代と共に見ることができたことは幸福だと思う。

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October 07, 2018

100エイカーの森の生産性とか。大人になった僕とプー。




仕事するなって2時間言われ続ける映画と聞いてたけどそんなことなかった。

100エイカーの森に住んでいた動物たちは実生活では本当に「生産性」がなくて、敢えてそれを動物にかぶせたのかなと思ったのが1つ。でも彼らは絶対に人を責めない。説教もしないんだ。

家庭を持って働く人には(男子とは言わない)辛く切ない内容なんだけど、辞めてしまえではなくて仕事しても良いけど、発想を変えようねと教えてくれる映画でもあった。

戦争に行ったクリストファーロビンてのもアウトオブイマジネーションだったかな。あと寄宿舎とか。お薦め。

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November 03, 2017

35年目のブレードランナー

初作は1982年公開。35年の年を経ての新作。レプリカントがまだ夢まぼろしの世界だった頃と比べてリアルが増している。思えば35年前はビルの外壁に大型ビジョンが唸る世界すら新鮮だった。あの衝撃は流石に再現できないものの、35年後の渾身の世界観の継承は見事だとしか言いようがない。

人間の近くに確実に忍び寄っている人工知能に対して、自分たちの感じる恐れとか、憧れ、未知のものへの距離感の掴み方など、これを最初のブレードランナー遭遇とする世代にも迫るものがあるだろう。

新宿のTOHOシネマ、IMAXで。スクリーンの大きさもだけど音が素晴らしい。お薦め。

どうだろう。3作目もありそうな雰囲気だけど、見られるかな。時間的に。



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October 09, 2017

「天使のはらわた 赤い淫画」を何十年ぶりかで観たのだけれど

こないだ出向いた映画セミナーでトーラさんとかに「天使のはらわた 赤い淫画」の絶賛の話を散々され、何十年ぶりかで観たんだけれど、いやー。あの頃のにっかつロマンポルノって改めてすごいよなぁ。

まずポルノ以前に暗い暗い暗い暗い。なんであんなに鬱屈して暗いんだろう。

そのうえスマホがないないないない。

連絡がつかないつかないつかないつかない。

俺なんかその辺りが気になって気になって、あ。公衆電話かけるのかそうかみたいなそこかよ。

ないないない言ってるうちにその辺で気持ちがとらわれて、エロは。。あれエロなのか。エロってあんなでしたっけ。今のAVってなんなのこれ。みたいな。なんだかエロまで妙に複雑な味がする難しいお菓子みたいなんだよなあ。

美味しいのこれ?どうなのみたいな。
まず第一に。。とか語りたくなるエロってもうないよね。ロリアニ全盛の地点から何千光年彼方の星だよ。

別の国の別のおとぎ話みたいだね。おとぎ話と呼ぶにはグロいんだけどね。あの時代の空気ってあんなでしたっけ。

うーん。これは何なのだろうと改めて考えると暗がりの狭路に迷い込むようで、この辺りが評論魂を掻き立てるのだろうなあ。同シリーズの他の作品も観たいか観たくないか。微妙です。

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February 20, 2016

新宿で「スティーブ•ジョブズ」




新宿で映画「スティーブ•ジョブズ」 見なくてもよかったかなあ。「ジョブズとリサ」てタイトルにしたほうが良かったのではと。

Appleの歴史とジョブズのライフストーリーの概要を知らない人はわけわからんだろうし、知ってる人にはまあ。。どっちでもな感じ。映画全体がサイドストーリーみたいな。

「こんなクズだったのか!」と知らなかった人には新鮮かな。でもきっともっとクズだったと。

とにかく大半が発表会の楽屋でこんな時こんなこと言ってくるかよみたいな話をどっと登場人物が詰め込んでくるし、場面転換があまりなくてセリフが膨大。ウディアレンみたい。スラムドッグミリオネアは素晴らしい映画だったけどなあ。同じ監督だそうです。

ジョブズのクズっぷりも中途半端でリサのエピソードとかへーてところもなくはないが、しかしスカリーはお気の毒な描き方。

2013年のバージョンを見てみたくなったけど、まあどうだろうか。

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December 26, 2015

ディズニーとスターウォーズ


https://www.facebook.com/sakacharn/posts/1184839091544025

という投稿を見たのでちょっと。

新作はまだ観ていないのですが、ディズニーの好戦的体質については耳にしたことがありますが、あの戦争では日米ともに多くの作家が戦争宣伝に加担しました。もちろんディズニーだけではありません。

みんなに愛されて僕も大好きだった「のらくろ」は今の価値観ではただの軍隊礼賛モノですし、日本軍をこぞって慰問した有名作家の群れには今更触れるまでもないでしょう。

ウォルトディズニーは戦いも煽ったかもしれないし西部開拓を偏った視点で描いているかもしれないけれど、それでも現実とかけ離れた夢の世界も作りました。ピーターパンも戦っているし、ミッキーだって時に戦いますけどね。ウェンディも時には戦う女の子でありました。

男の子にとって。いやおそらく女の子にとっても、ファンタジーやアドベンチャーと背中合わせに血なまぐさい戦いがあります。それを夢で包んだことで罪があるならあるのでしょうが、ものごとはもう少し複雑であり、多面的に見る必要があるでしょう。

スターウォーズに関しては、きっと多くの人から同じような擁護の論が出るでしょうが、あれは戦いの物語でもありますが、父子の話でもあり、人間の善悪は何なのか、深い世界への構えも同時に用意してきました。

暗黒面に堕ちるなという警鐘のキーワードは常に現実の世界で自分に染み付いていると言わざるをえません。自分として、これが暗黒面だと実際の生活で思うことは確実にあるのです。

さらにスターウォーズは元来ディズニーが生み出したものでもありません。もちろん今後に注目ですがウォルトディズニーの「好戦的な」姿勢をスターウォーズの銀河戦争に繋げるのは些か牽強付会でありましょう。

ピクサーを立ち上げたスティーブジョブズはディズニーの重要な役員でもありましたが、かくいうアップルもファンタジーとカニバリズムの両面を持つ会社となりました。

詰まる所、我々は米国文化とその世界戦略についてどう理解するのかということであり、それはそんなに単純ではないだろうということです。

もっとも、日本は他のどの国よりもその飴の甘さと恐ろしさをわかっている国だと思うのですが、現状進行している様々な事態はつくづく残念なことです。

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